さらに、靴選びも重要だ。
「数万回の足の運びを支えるものですから、高級なものでなくても、クッション性の高い、それなりにいいシューズを履きたいですね」
実際、クッション性のない激安シューズで親指の爪がはがれたという例もある。
「多くのマラソン選手が履き始めたことで一般ランナーの間でも流行の『反発力のあるプレートが備わった厚底シューズ』はバネが強く、履くだけで推進力が得られますが、筋力がないと足を痛める原因になります。
選手は練習のときにあえて素足の感覚に近い薄底シューズを履いたりしますが、最近は練習時から厚底シューズを履く選手が増え、脚力の衰えを嘆くコーチもいます。1kmを6分よりゆっくり走るランナーには、厚底ではなく、エントリーモデル(着地衝撃を吸収するクッション性の高いモデル)をおすすめします」
気が早い話だが、レース中はどんな配分で行けば、完走できるのだろう?
「まず、一定のペースで走ろうと思わないことです。レース中の体調にはムラがあり、ハイになってきたらペースが上がり、疲れれば下がります。その波に逆らわず乗っていけばいいと思います。
初めからウオーク&ランで臨むという手もあります。たとえば東京マラソンは、1km10分(時速6km)で完走できる。早足くらいのペースなので、走り続けなくても大丈夫。
歩きたくなったら歩けばいいのですが、止まるのはNGです。脚を動かしていれば筋肉の収縮がポンプの役割を担い、血液循環をサポートしますが、止まると疲弊した筋肉が固まり、動けなくなることも。止まらないためにも、脚力をつけてください」
【プロフィール】
ニッポンランナーズ代表・齊藤太郎さん/リクルートRCのコーチとしてシドニー五輪代表選手を育成後、2002年に地域スポーツクラブ「ニッポンランナーズ」を設立。幅広い世代に美しく健康的な走り方を指導する。FIFA国際サッカー連盟、日本サッカー協会トップレフェリーへのランニング指導なども行う。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2023年9月21日号