「残るためなら何でもする」
今年3月のWBC決勝。盟友は土壇場で初対戦し、大谷がトラウトを三振に切って取った。前出の小谷氏が語る。
「WBC前のキャンプで投球練習している際、トラウト選手は打席に立って球筋を見ようとしたが、大谷選手は拒否したそうです。微笑ましい逸話ですが、実は2人とも本気モードだったのかもしれない。決勝後、チームに戻った2人があの対決について振り返ることはなかったそうです」
盟友に敗北を喫したトラウトは、シーズン前にこう言った。
「大谷がここに残るためなら何でもするよ。今年こそは、プレーオフに出なければならない」
2人はWBC後の次の夢に向けて「勝ちたい」という気持ちを前面にシーズンを戦い、2者連続本塁打の「トラウタニ連弾」で何度もファンを沸かせた。現地の米国人記者は言う。
「6月の試合では、一塁走者の大谷が二塁走者のトラウトにアイコンタクトを送り、息の合ったダブルスチールを成功させて結果的にサヨナラ勝ちしました。『2人でチームを勝たせる』との意識が伝わる場面でした」
だが7月にトラウトが故障で離脱すると、大谷の奮闘もむなしくシーズン終盤にチームは失速し、プレーオフ進出を逃した。手術直前の9月17、18日のタイガース戦。本拠地のベンチには、故障者リスト入りしたはずの大谷とトラウトの姿が。2人からは来季にかける意気込みが窺えた。
「試合前の打撃ケージで、大谷は熱心にエンゼルスの野手を指導し、トラウトも若手にハッパをかけていました。彼らの姿勢からは『このチームでワールドシリーズに勝ちたい』という気持ちが伝わってきた」(同前)
深い部分でつながった“最強の兄弟”は、どんな決断を見せるのか。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2023年10月6・13日号