特に男性の場合、赤い色を見ると男性ホルモンの一種であるテストステロンが出やすくなるとされています。スポーツで赤いユニフォームを着けたほうが勝率が上がるとか、ネクタイを赤色にすると仕事がうまくいくなどと言われるのは、赤がテストステロンの分泌を促し、気分が高揚しやる気がみなぎる効果が期待できるからです。
80歳にしてエベレスト登頂を果たしたプロスキーヤーの三浦雄一郎さんが、このテストステロンを注入していることは有名な話です。76歳でスキーで転倒し、大腿骨と骨盤を骨折した三浦さんですが、回復に向けてはトレーニングに加えて男性ホルモン注入やED治療薬の服用も役立ったと語っておられます。
加齢により体内の男性ホルモンは自然に減るものですが、タンパク質の多い食事や運動習慣によって、ある程度保つことが可能です。たとえば、男性ホルモンの材料であるコレステロールが含まれる肉をしっかり食べる人のほうが元気を維持できます。
年齢にそぐわないと思われるとしても、派手な服を着ることは本人にとっていいことですし、女性なら、特に化粧が効果的です。そのようにおしゃれをすれば、何となくそれなりの場所に出かけたくなるものです。それが行動範囲を広げ、感情を若返らせ、脳を活性化します。
これは心理療法の一つである「行動療法」の応用とも言えます。行動療法とは、「行動を変えると、心の状態も変わる」との考えに基づく治療法です。周りから「派手」と思われようが、自分の好きな装いに着飾って出かけるという行動が、心を若返らせるのです。(了)
【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラー総合第1位(トーハン・日販調べ)に。