シロクマ版の「パンどろぼう」は、柴田さんが自分の個展のために描いた絵で、その名刺を見た編集者は喜んだという。パンを誰にかぶらせるか、いろいろ考えたすえに現在のキャラクターにたどりついた。主人公が「どろぼう」という意外性が子どもにおそらく大人気の理由のひとつだが、読者に嫌われないキャラクターにすることに気をつけて描いた。
今回、『ほっかほっカー』を描くにあたって、柴田さんは自動車修理店を取材したそうだ。
「いままであまり機械類を描いたことがないので、取材なしでは描けないと思って。私の家の近所に個人でやってらっしゃるところがあって、昔からの仲良しでもあり、車をどんな風に修理するのか、どんな道具があるのかを見せてもらいました。できあがった絵本を持っていったら、とても喜んでくださいました」
柴田さんは、もともとグラフィックデザインを学んでいた。イラストレーターとして、絵本の挿絵も数多く描いてきたが、オリジナルの絵本は「めがねこ」シリーズが初めてだ。
「ずっとイラストレーターとしてやってきたので、お話を作ることにはいまだに苦手意識があります。苦手なんて言っちゃいけないんですけど、なるべく文章を少なく、説明っぽくしないようにと心がけています。
あと、地元の小学校で絵本の読み聞かせのボランティアをやっていて、いろんな絵本を読んできたので、なんとなくリズムをつかんだところがあるかもしれません」
「え? こういう展開なの?」というナンセンス的な絵本が好き
長男が生まれたときに、この子に毎日できることはないだろうか、と考えて始めたのが絵本の読み聞かせだった。長男が小学校に入る少し前に、ボランティアとして学校に行くようになったそうだ。
「自分の糧にもなるし、学校の様子もわかって一石二鳥だな、と。子どもたちから勉強させてもらっています。1年生や2年生は『面白かった!』『楽しかった!』ってすぐ反応があるんですけど、高学年になるとほんとに静かに聞いてくれるので、最初のうちは『これで良かったのかな?』と不安でした(笑い)。
自分の本を読んだこともありますが、自分の本だとちょっと気恥ずかしいです」