なんと、作者自身から『パンどろぼう』や『めがねこ』などを読み聞かせてもらえている幸運な子どもたちが高知にはいるらしい。
「子どもって、まるで映画を観るみたいに、絵本の世界に入り込めますよね。自分でも、そういうお話はすてきだと思います。
大切なことを伝えるお話も、もちろんいいんですけど、私は『え? こういう展開なの?』って思える、ナンセンス的な、長新太さんの絵本みたいなのが割と好きですね」
「めがねこ」や「しろくま」など絵本の主人公を動物にしている。柴田さん自身、小さいころから犬や鳥を飼い、動物に親しんで育ち、いまは猫を飼っている。
柴田さんの自宅周辺は、高知でも自然が豊かな地域で、周りに田んぼが広がり、車で10分ほど走れば山に行きつくそう。「パンどろぼう」の店の近所にも美しい森や山が広がっている。もしかして、この場所のモデルも高知ですか?
「……というわけでもないんです。自分の好きな世界を描きたいと思っていて、なるべくどこの国とか決めずに、瓦屋根とかどの国かわかる建物も、物語に必要がない限りは描いていません。あと基本的なところでは、携帯電話とか、今後、変わっていくであろう機材的なものもあまり入れないようにしています」
さて、パンを作って販売もできる、すばらしいキッチンカーを手に入れた「パンどろぼう」にはさらなる展開が期待できそうだ。
「『パンどろぼう』の世界はこれまで狭い範囲でしたけど、パンを作って売りに行ける『足』を手に入れたので、これからいろんな場面が書けそうです。『足』を使って、どんどん世界が広がっていくんじゃないでしょうか」
【プロフィール】
柴田ケイコ(しばた・けいこ)さん/高知県生まれ。2002年よりフリーイラストレーター。2016年、『めがねこ』で絵本作家デビュー。2017年『おいしそうなしろくま』でリブロ絵本大賞、けんぶち絵本の館アルパカ賞を受賞。2018年『あま〜いしろくま』でけんぶち絵本の館びばからす賞を受賞。2020年『パンどろぼう』でリブロ絵本大賞、TSUTAYAえほん大賞を受賞。ほかに『パンダのおさじと フライパンダ』『かぼちゃスープのおふろ』『ぽめちゃん』など多数。一筆箋やレターセットなどかわいいイラストの文房具にもファンが多い。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2023年11月2日号