名門ドラマ枠に求められる制作姿勢
鈴木亮平さんは『天皇の料理番』『テセウスの船』『TOKYO MER~走る緊急救命室~』などに出演してきた「日曜劇場の顔」の一人。その一方でスタッフの新井順子プロデューサー、塚原あゆ子監督、脚本家・奥寺佐渡子さんのトリオは、『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』『最愛』などの「金曜ドラマ」を手がけてきた名チームですが、3人で日曜劇場に挑むのは初めて。
二宮和也さん、中谷美紀さん、大沢たかおさんは全員、月9初主演。その一方でスタッフの鈴木雅之監督は『HERO』『婚カツ!』『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』、『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』『元彼の遺言状』、企画・プロデュースの成河広明さんは『デート~恋とはどんなものかしら~』『コンフィデンスマンJP』、脚本家・徳永友一さんは『海の上の診療所』『海月姫』などの月9を手がけ実績十分。
『下剋上球児』も『ONE DAY』も、「初めて」×「実績十分」という主演とスタッフのかけ合わせで勝負している様子がうかがえます。
この組み合わせが示しているのは、「長い歴史がある名門ドラマ枠だからこそ、これまで通りではなく、新たな部分も入れて多様さを見せていかなければいけない」という制作姿勢。日曜劇場は「2013年の『半沢直樹』以降イメージがついた勧善懲悪という世界観からの広がりを見せていきたい」。月9は「2018年夏から2023年春まで視聴率安定のために、ほぼ刑事・医療・法律の一話完結ドラマに絞ってきたため、そこからの脱皮を狙いたい」という様子がうかがえます。
すでに予告されている終盤の奇跡
『下剋上球児』も『ONE DAY』も伝統枠だからこそ守りではなく攻めの姿勢が表れた作品なのですが、ここまではそれが良い方向につながっていないのがつらいところ。
ただ、『下剋上球児』は現在2016年の夏が描かれていますが、第1話の冒頭シーンは2年後の2018年夏に行われている三重県大会決勝戦のシーンでした。その2年間で南雲と周囲の人々はどのような奇跡を起こして無免許問題を解決し、甲子園出場校を撃破するのか。
一方の『ONE DAY』も現在、二宮さん演じる逃亡犯と、中谷さん演じる報道キャスターの物語が重なりはじめ、今後は大沢さん演じるシェフも絡んで、主演3人の豪華共演という奇跡を見せてくれるでしょう。さらに「時計の針が午前0時を指した時、彼らの目の前に広がる光景とは?」と予告しているため、やはりクライマックスには奇跡を期待できそうです。
つまり、両作は「終盤に大きな奇跡が起きるため、そこまで多少の不満があっても見続ければ感動できるかもしれない」という共通点を持つ作品なのでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。