心無い言葉を浴びせられる猟友会の人々(写真は北海道・札幌の猟師たち/時事通信フォト)

心ない言葉を浴びせられる猟友会の人々(写真は北海道・札幌の猟師たち/時事通信フォト)

 事態を重く見た秋田県の佐竹敬久知事は、一方的かつ悪質な抗議電話を「カスタマー(消費者)ハラスメント=カスハラ」と位置づけ、「業務妨害であり、すぐに電話を切るべき」と怒りをあらわにした。

 東北を中心に各地で過去最悪のクマ被害が報じられるなか、近年、ヒグマの市街地への出没や人身事故が続く北海道にも全国から抗議が集まる。

 7月末に釧路町内の牧草地で駆除され食肉加工されたヒグマが、「道東地域で60頭以上の牛を襲った個体『OSO18』だった」と判明すると「なぜ殺した」といった抗議が同町役場に相次いだ。

「最近も『山のものを勝手に獲りジビエとして出荷するのは横領罪』と主張する東京の男性から電話がありました。興奮して話にならないケースは稀だが、『周囲が怒っているから代表でかけた』という九州の年配男性もいました」(釧路町役場)

 北海道庁ヒグマ対策室の担当者もこう言う。

「ヒグマ捕獲のニュースが流れると、抗議は爆発的に増えます。男性は高齢者が多い印象ですが、女性は若い人も含まれ、ヒグマを『クマちゃん』と呼ぶ方も。『子グマを殺すのは悪魔の所業』と罵られることもあり、応対する職員のメンタルが心配になりました」

「ついカッとなって」

 複数自治体への取材によると、抗議電話は関東や西日本などクマ被害とは直接関係のない地域からのものが目立つようだ。社会心理学者の池内裕美・関西大学教授が言う。

「美郷町のケースは、クマ親子の映像が視覚的にもインパクトが強く、それを全国ニュースで見た人たちから感情的な意見が殺到した可能性があります。悪質な“カスハラ”紛いの事例が多かったのは『公僕である公務員には、理不尽な要求や悪態を言いやすい』という心理が働いたとも考えられます」

 過去にクマ駆除を担当した、ある自治体職員はこう振り返る。

「もちろん真剣に動物愛護の精神から電話をかけてくる人もたくさんいて、クマは外来種でもないので共存できると考えている人は多いようです。過去には、人間によって住処を追われるクマがクローズアップされたこともあり、『かわいそう』という気持ちが根底にあるのでしょう。

 そうした人々を過熱させてしまった要因として、『子グマの駆除』のニュースは大きかったように思います。実際、親子グマ駆除のニュースを見て電話してきた年配男性は、話すうちに冷静になり、『クマのキャラクターが大好きな孫娘が“クマさんかわいそう”と言うから、ついカッとなった』と仰っていました」

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