“外からのクリエイターたち”と映像をつくることを重視している

“外からのクリエイターたち”と映像をつくることを重視している

VHSが持つ“信頼できない語り手”としての強度

『このテープ』で紹介される番組録画テープももちろん実際に放送されることなかったフェイク映像。その映像も一から作り上げたわけだが、その映像の画質の粗さが、ビデオテープ特有のそれであり、不気味さをより一層際立てている。

「僕の世代の問題なのかもしれないんですけど、ビデオテープの画質というのが生理的に不気味さを感じさせます。iPhoneの画質と比べても画素数も低いですし色の幅も狭い。それがなんか落ち着かないし、映像のノイズからも嫌悪感を感じる。

 加えてVHS特有の上書きをするという工程がより一層不気味さがあると思います。都市伝説のものもあるでしょうがレンタルビデオ屋で、何者かが上書きして1分だけ元の映像が残っていたみたいなことがあるじゃないですか。そういった意味で“信頼できない語り手”としての強度がVHSにはあると思います。

 今回の映像も一度VHSを介してデータ化しているんですけど、最初は新品のVHSでやってみるものの、いい感じに映像が劣化しないんですよ。どうやら何回も何回も録画して擦り減ったVHSを使うからあの微妙なノイズが出るそうで。最終的には映像編集のオペレーターさんの自宅にあったハイスタ(Hi-STANDARD)のライブが録画してあった貴重なビデオテープを使わせてもらいました(笑)」

 当時の映像を再現するために画面比は4:3のサイズになっている。そのため現在のテレビで放送すると左右に黒い帯のような余白ができることになる。『このテープ』では、この黒みに、何かが映るといったギミックを使い恐怖を演出していた。

「梨さんと話しているときに出たアイデアなんですけど、あの黒い帯の部分になにか映せないかなと思い、本当に見えるかどうかギリギリの明度で映したんです。だから初見では気づけないんじゃないかなと思います。

 編集所でも、色々なテレビやiPhone、Androidで再生して、半分の機器では見えないくらいの暗さにしました。あるメーカーのテレビではほとんど見えなくて、あるメーカーのテレビではうっすら見える、そのくらいのギリギリを狙いました」

 番組では、1985年に放送されていたという『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』という架空の視聴者投稿番組が紹介される。視聴者投稿ビデオ企画といえば『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』(TBS)が元祖といわれているが、その1年前に実はあったというのが裏設定だという。

「昭和の番組を見返して出演者の距離が異常に近いっていうのが個人的にツボで、収録でもギュウギュウの雰囲気で撮りました。昭和の番組っぽさを出すために、美術さんが当時の美術スタッフに話を聞いてくれたりしました。

 一番こだわったのは照明ですね。今のテレビの照明ってホリゾントといって上と下から光を両方当てて均一になるようになっているんですけど、昔は上から当てたものを反射させて全体を明るくしていたそうで、そうすると光はあまり均一にならないんです。照明だけは編集では直しにくいので、今回はそのやり方を使いました。本当はテロップもレタリングして作って出したかったし、昭和を監修してくださる方を入れたかったんですけど、予算が尽きてしまって。そこは若干心残りではありますね」

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