お金だけでなく名誉も
経済効果だけではない。今回のグラブ寄贈は「大谷の一流メジャーリーガーとしての覚悟の表われでしょう」と指摘するのは、メジャーリーグ評論家の福島良一氏だ。
「億単位の寄付は日本では珍しいかもしれませんが、一流選手が慈善団体などに寄付することはメジャーでは伝統的に行なわれています。
慈善活動でよく知られるのが、元パイレーツのロベルト・クレメンテ(1934~1972年)です。出身地のプエルトリコやラテンアメリカ諸国に、野球道具や食料品などを提供して尊敬を集めましたが、1972年の大晦日にニカラグア地震の被災者に支援物資を運ぶ際、チャーター機がカリブ海に墜落して還らぬ人となりました」
メジャーでは古くから、最も社会貢献をした選手に「コミッショナー賞」を授与してきたが、クレメンテの没後、その功績を称えて「ロベルト・クレメンテ賞」と改名。同賞の受賞は、MVPに匹敵する名誉とされる。
すでにメジャーMVPを手中にした大谷だが、慈善活動にも熱心だ。メジャー1年目の2019年オフには、米国で心臓移植手術を目指す心臓病の少年を見舞ったことで多額の寄付金が集まった。2021年、選手会が選ぶ年間MVPとア・リーグMVPに輝いた際は、賞金7万ドル(約1050万円)全額を、闘病中の子供たちを支援する団体「ミラクルズ・フォー・キッズ」に寄付している。
「メジャーの一流選手は寄付に熱心で、親族を代表とする基金を立ち上げるなどしてチャリティー活動にあたるケースも多い」(スポーツジャーナリスト・友成那智氏)というから、大谷もその系譜を意識するのだろう。
世界の“超一流”たろうとする大谷。その移籍先候補として、MLB公式サイトは「8球団」を挙げて特集した。
「メッツでの千賀滉大(30)との日本人コンビも期待されましたが、可能性の相場観は2割程度と低そうです。マリナーズ、ジャイアンツ、パドレス、レンジャーズも候補だが、なかでもロサンゼルス・ドジャースが最有力で3割程度でしょうか。エンゼルス残留の可能性もあるとみられています」(前出・友成氏)
最有力のドジャースにせよ、エンゼルス残留にせよ、米西海岸の大都市・ロサンゼルスのファンは歓喜するに違いない。メジャーのトップたる超一流選手に相応しい活躍の舞台となるだろう。
※週刊ポスト2023年12月1日号