立件が年間「ゼロ」の衝撃

 オレオレ詐欺の発生は、1999年頃から目立ち始め、手口の多様化や被害の急増に伴って2004年に警察庁が「特殊詐欺」と命名。高齢化社会の進展に便乗し高齢者を標的にした詐欺事件の捜査に、伝統ある2課も現在、多くの人員を割き追われている。

 事件が増加傾向を見せた当初は「単純な詐欺は所轄(の警察署)がやる事件。2課の出番ではない」と高をくくっていたが、風向きが変わったのは2014年。2課の収賄事件立件が年間を通じて「ゼロ」という衝撃の結果だったためだ。

 そしてこの年は全国の特殊詐欺被害が初めて総額500億円を突破。同年1月まで警察庁刑事局長を務め、翌2015年8月まで1年半にわたり警視総監の職にあった高綱直良の大号令で特殊詐欺捜査は2課の最重要課題となったのだ。2課の課長として親和銀事件捜査を指揮した高綱は刑事警察の頂点・局長職にあった時期に被害の拡大を許してしまったことで尻に火がつき、総監として古巣にテコ入れしたというわけである。

 警視庁に次ぐ規模を有する大阪府警には現在、捜査2課とは別に専門の特殊詐欺捜査課が置かれるなど全国警察にとって特殊詐欺の封殺は最重要テーマである。

ライバルと対照的な図式に

 2課と特捜は狙いがかぶるため当然ライバル関係にもあるが、オリンパスが財テク失敗で抱えた1000億円超の含み損を「飛ばし」の手口で損失隠ししていた事実が2011年に発覚すると、東京地検特捜部は警視庁捜査2課との合同捜査に踏み切る。大阪地検の証拠改竄事件(2010年発覚)の影響で大型事件から遠ざかっていたため、検察の復権をかけてオリンパスの大型粉飾決算をなんとしても自らの手で立件したかったからだ。

 2課の関係者は「うちが先に捜査を始めたのに特捜が食らいついてきた」と不満顔。それでも背に腹は代えられない特捜は、先に手を挙げた2課と一緒に捜査する妥協策を選ぶしかなかった。

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