スズ子にとって残された家族は、血の繋がらないお父ちゃん(写真/NHK提供)

スズ子にとって残された家族は、血の繋がらないお父ちゃん(写真/NHK提供)

 梅吉の魅力は「カッコいいことをカッコ悪く言うところ」だと言う。

「印象的なシーンがいくつもありましたが、なかでもスズ子の友達が歌劇団を辞めると言い出し、それを聞いた梅吉の『辞める言うんはな、ごっつい勇気のいることやぞ』というセリフにはハッとさせられました」(福岡氏)

 スズ子が「東京に行きたい」と言った時(第25話)は、離れることへの不安から猛反対したツヤに対し、梅吉は「あいつはどんだけ反対しても絶対に行きよるで。そう育てたんはツヤちゃんや。なんでも自分で考えて生きていけるように育てる言うてたがな。その通りに育っているわ」と語りかけた。前出の田幸氏が言う。

「この台詞にはグッときました。しっかり者でたくましい妻とは対照的に頼りない夫だった梅吉さんですが、妻が弱気になった時は頼もしさを発揮する。梅吉さんという人はすごくピュアで、誰よりも“信じる力”が強い人だと感じました」

似たもの親子

 だが、やり切れない出来事が続いた梅吉は酒に溺れ、現実逃避する。スズ子とも衝突することが増えるが、そこに見えるのは「血の繋がりがない」という寂しさではなく、本物の親子の実感だったと田幸氏は語る。

「酔っぱらった梅吉さんがケンカして警察に捕まった時(第44話)、視聴者のほとんどが“スズ子の悪口を言われたからだ”と想像できたはずです。それまでの梅吉さんを考えればすぐにわかるのに、気づいてないのはスズ子だけで、頭ごなしに怒鳴りつけてしまう。後先考えずに感情で動くところは、欠点でもあり魅力でもある。梅吉さんのそういうところはスズ子もソックリで似たもの親子なんです。家族のなかでそんな2人をうまく繋いでいたのがツヤや六郎だったのでしょう。

 一般の家庭でもあることですが、残された家族が似たもの同士だとケンカばかりになってしまう。大事な家族がいなくなったことで、皮肉にも2人は本当の父と娘なんだとリアルに感じさせます」

 撮影現場では毎朝、スズ子を演じる趣里が「お父ちゃん、おはよう」と声をかけ、柳葉も「元気かぁ」「ちゃんとご飯食べてるかぁ」と笑顔で答えるそうだ。

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