つまり最新の治療法であるゆえにどこの病院でも受けることができるわけではないというのが現状のようだ。しかし北陸でのロボット手術をリードしてきた小竹医師は、ロボット手術にこだわりすぎる必要はないと話す。
「とにかくいちばん大切なのは、『根治すること』です。取り切れずにがんが再発すると、根治が難しくなります。ですから、最初の手術で取り切ることを優先すべきです。
根治ができるなら、開腹でも腹腔鏡でもロボットでもいい。患者さんの病状に最も合った方法で、なおかつその医師が最も得意とするツールを使える医師がいちばんです。それを患者さんが判断する方法の1つは、ホームページなどで医師のプロフィールを確認すること。学会に所属しており、技術認定を取っていれば一定のレベルに達していると考えていいでしょう」
チーム医療が明暗を分ける
大腸がんは、再発リスクの高いステージIII(リンパ節への転移がある)以上の場合、術後に補助的に化学療法を行うことが推奨されている。また、近年、直腸がんでは術前に放射線治療や抗がん剤治療を行う方法が普及しつつある。前出の中村医師が解説する。
「これまでは、直腸がんが周囲の臓器に浸潤している場合やリンパ節転移が広がっている場合、確実にがんが取り切れない場合は放射線と部分的に抗がん剤を行ってから手術を行うことで、再発形式の中で最も多い『局所再発』を防ぐという考えでした。しかし、局所再発は減らせたものの、生存率は向上しませんでした。なぜなら、肝臓や肺への遠隔転移を防げないことが多かったからです。
そこで近年は、放射線と局所への抗がん剤治療に加え、さらに全身化学療法を追加してから手術する方法が取られるようになりました。これを『TNT』と言います。
化学療法は術後に行えばいいと思うかもしれませんが、術後は体力や免疫力が低下するため、最後まで治療を完結できない患者さんが多いのです。TNTに切り替えることで、無再発生存率が向上しました。腫瘍が縮小した結果、手術の切除範囲も小さくなり、体への負担が大幅に減った患者さんや、腫瘍が消失して経過観察している患者さんもいます」
乳がんも同様だが、がんの治療は外科医だけで完結するものではなく、放射線治療医や腫瘍内科医(がんの薬物療法の専門医)、病理医(がんの悪性度や進行具合を見極める専門医)をはじめ、副作用に対応する薬剤師、がん専門看護師など、多職種で対応する必要がある。そうした専門職の人たちがチームを組んで対応できているかどうかも、がん治療を受ける施設選びでは重要だ。前出の小竹医師が話す。