皇太子と並んで式典に
だが池田氏は、より広い「別の家」に居住実態があることが指摘されてきた。その家は高い塀で囲われた教団施設「第二別館」だ。敷地は自宅の5倍以上の約2603平方メートル(787坪)、建物も鉄筋コンクリート造で、地下1階地上2階建て(延べ床1283平方メートル)だ。1971年に「居宅」として新築登記され、1986年と2006年に二度増築されている。地元・新宿区で長く学会活動に携わったA氏(59)が証言する。
「創価中学(東京・小平市)に在学中の1976年ごろ、たまたま来校した池田会長と話す機会があったんです。『住まいは新宿です』と言うと、池田会長から『私と一緒だね。家に遊びに来なさい』と。嬉しくて地元の幹部に話すと、『警備上の理由からもう(池田氏本人が所有する)あの邸宅には住んでいらっしゃらないよ』と引き留められました」
1970年代から木造の自宅でなく、警備しやすい第二別館にいた可能性を推察させるエピソードだ。
こうした施設使用が当局から問題視された過去もある。タダなら賃料分相当の給与を払っているのと同じで、池田氏に所得税が発生するという理屈が出てくるからだ。
国税庁が税務調査に入った1990年代、池田氏は4年4か月分の賃料約2600万円を、遡って教団に支払ったと報じられている。その後も支払いを続けたのかを質問したが、創価学会広報室は回答しなかった。
この賃料をめぐる問題は国会審議でも取り上げられた。その時期は公明党の非自民連立政権への参画(1993年)、新進党への合流(1994年)の頃と重なる。対峙する自民党が、公明党・創価学会に揺さぶりをかけるなかで注目された面もある。
それゆえ、問題が指摘されかねない処理は、避けられていったという。当時本部で対処にあたった元職員は、税務調査後の1994年、本部内で池田氏の財産を管理する部署が新設され、決済ルールも整えられたと証言した。
(後編につづく)
【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/1975年、東京都生まれ。慶応義塾大法学部卒。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、2015年からフリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞
※週刊ポスト2024年1月1・5日号