日本は非課税世帯などには手厚いが、こうした中間層(便宜上使う)、とくにサラリーマンを中心として被雇用者はとくに厳しい社会構造になってしまった。完全に可視化された収入、取りっぱぐれのない中間層を狙い撃ちにし続けるうちに、多くを「中の下」に転落させてしまった。
まだ「中の上」にいる層でも不安を口にする人は多い。都内上場企業に勤める年収600万円、パート勤務の妻と子ども2人の40代男性は語る。
「手取りの減り方がもう、明細見たくないくらいです。自分の趣味なんてもう後回し、いかに家族で乗り切るか、ですよ」
600万円と聞くと余裕のありそうに見えるが、わずかの間にこうした層すら厳しくなってしまった。手取りとすれば400万円半ばから後半といったところか。持ち家、ローン、都心か地方かなど立ち位置にもよるが、これまでとは明らかに「使えるお金が減っている」ことは事実だ。
「これでもそれなりに昇給している立場なんですけど、そんなの焼け石に水ってくらいに負担が増えてますからね。もう一般的な勤め人ではどうすることもできないんじゃないですかね」
どうすることもできない、とは日本そのものが世界的に置いてきぼりのまま30年、アフターコロナ以降の2023年の世界的なインフレと賃金上昇のままに日本国内は増税、社会保険の高負担、各種控除の削減の状態で、サラリーマンを中心とした被雇用者が身動きできない状況になっていることを指している。
実家を頼れるのは羨ましい
別の30代、妻と子ども二人の中小企業勤務の男性は、生活防衛のためにある決断をしたと話す。
「北関東の親と同居ですね。通勤時間は余裕で1時間を超えますが仕方がない。実家から駅も遠いので往復2時間は見ないといけなくなります。でも家賃、光熱費、ちょっと先行き暗いなと思ったので早めにギブアップです」
彼の両親と妻の仲はよくないが、それも仕方がないとのこと。
「共稼ぎでも都内で暮らすには使えるお金が少なすぎる、貯金も少しずつ切り崩すようになったら決断は速いほうがいいかなと。妻もしぶしぶ承諾してくれました」