VFXによって非現実的な光景が現実に溶け込む

VFXによって非現実的な光景が現実に溶け込む

フェイクドキュメンタリーが“成功”する瞬間

 ちなみに本作には「企画」として春名剛生がクレジットされている。フェイクドキュメンタリーファンならその名前に聞き覚えがあるはずだ。そう、長江俊和による伝説的フェイクドキュメンタリーシリーズ『放送禁止』のプロデューサーだ。

小林:最初は恥ずかしながら春名さんと『放送禁止』が結びついていなくて。最初の打ち合わせに呼ばれた時、何かしらのドッキリを疑っていました(笑)。こんな「蛇口が勃起する」とか書いてある企画書にフジテレビが金を出すわけがないって。でも名刺交換をしたらどうやらフジテレビの人だっていうのはウソじゃないと。

針谷:撮っている間もずっと疑っていたよね(笑)。

小林:春名さんはプロットを見て、「思い切りやってくれ」って言ってくれて。で、後から『放送禁止』もやっていたと知って、だからか!と。“伝説の戦士だった感”がありましたね。刀の柄を見て気づくみたいなエモみがありました(笑)。

 そうして最新のテクノロジーを駆使した奇想天外なフェイクドキュメンタリーSFドラマが世に放たれたのだ。

小林:企画を出した時もテレビでフェイクドキュメンタリーが流れる味みたいなことを特別意識してなかったんですけど、第1話のオンエアをリアルタイムで見て「うわ、キモ!」って思いましたね。いい意味で。なんかわけわかんない番組が流れるっていうのは楽しいなって。明らかに何かが間違っている感じ(笑)。

針谷:テレビで流れているテレビ番組そのものがウソっていうね。個人的には中学生の時に深夜、夜更かししてたまたま見たかった。自分が作ったものですけど(笑)。

小林:こういう設定をトバしたタイプのフェイクドキュメンタリーは見る人が「この設定に乗っかろう」って思う瞬間を作ることができたら成功なのかなって。今回の場合、1話の最初から『街です』って始まっていますから。「こういうことでやっていきますんで、ついてきてください」って伝えた上で突っ走る。その1話で離脱している声なき声がいっぱいいるかもしれないですけど、ついてきてくれる人は“共犯”になってくれたんじゃないかなと思います。

(了。前編から読む

【プロフィール】

針谷大吾(はりや・だいご)/テレビ編集マン。1985年生まれ。上智大学卒業後、テレビ番組の編集業務に携わる。現在はフリーで活動している。

小林洋介(こばやし・ようすけ)/映像ディレクター。1987 年生まれ。早稲田大学卒業後、制作会社Spoonでの勤務を経て、2019年東北新社に入社。同社のクリエイティブユニットOND°所属。CMからMVまで幅広く映像を手がける。

◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。

撮影/槇野翔太

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