接見に現れた渡辺被告は、「りりちゃん時代」のハイトーンのボブカットからは打って変わって、黒髪が目立つロングヘア──にすっぴん、クリアーフレームの眼鏡に黒のスウェットという姿。初手から満面の笑みで「はじめまして~!」と語尾を上げた「りりちゃん節」で現れた。
留置所での生活ぶりからホストや歌舞伎町についての“私見”まで、まるで「りりちゃん劇場」を見ているような15分の接見はあっとう間に終わり、筆者は裁判と接見でテンションが真逆だった彼女の様子に面食らい、何とも言えない違和感を覚えながら帰路についた。
それから2週間と少し経って届いたのが、冒頭の手紙だった。
《宇都宮さん、12月8日、面会にきて私のおはなしをたくさんひきだしてきいてくれてありがとうございました!!》(※以下《》内は渡辺被告からの手紙のママ)
接見のお礼から始まったその手紙は私の差し入れに対し、《めちゃうれしい!》《ありがとうございます!》を連発しながらも《でも、まだわたしのことわからないと思うし、めちゃ危険人物かもしれないのに(中略)まじで夜の世界に身を置いている人に関わるときにはしんちょうにしてください!!優しい心、じゅんすいな心を持つ人はすぐ食べられちゃいます。泣》と、こちらへの気遣いも覗かせる。
“おぢ”たちから億単位のお金を“頂いて”来た彼女らしからぬ気遣いと、接見で感じ取った彼女が置かれている状況にそぐわないハイテンションさに、若干戸惑ってしまう。また、書き出しから間違えた漢字を黒く塗りつぶしたり、《はーと》や《泣》などを多用する様からは、どこかおぼつかなさも感じた。
加えて、筆者が複雑な気持ちになったのは「事件」についての言及が一切なかったことだ。
手紙では渡辺被告が動画の中によく登場させていた「ちいかわ」についてや、筆者が歌舞伎町で取材していた時に出会った渡辺被告との共通の知人の近況についてなど、渡辺被告が関心をもっているとみられるあらゆる話題に触れられていたが、逮捕された時の心境も、被害者のことも、何一つ書かれていなかった。
そうした中で、もっともボリュームが割かれていたのが「歌舞伎町」についてだ。