本当の狙いはアリバイづくり
もっとも、岸田首相が政倫審に出たのは、真相解明のためでも、国民に謝罪するためでもなかった。本当の狙いは、野党の裏金問題追及で審議が遅れていた予算案を“強行採決”するアリバイづくりのためだ。自民党閣僚関係者はこう言う。
「かつてリクルート事件後の1989年、国会紛糾で予算案の審議が大幅に遅れ、時の竹下登・首相は予算成立とひきかえに退陣すると表明した。『第2のリクルート事件』と呼ばれる裏金事件で、岸田首相はその二の舞になって退陣に追い込まれることを非常に怖れている」
それを回避するためには、なんとしても予算案を年度内に成立させる必要がある。そこで岸田首相が政倫審に出席した2月29日夜、首相側近の小野寺五典・衆院予算委員長が野党の反対を押し切って翌3月1日に予算案の委員会採決を行なうことを委員長職権で決定した。
予算案を3月2日までに衆院通過させれば、今後、参院での予算審議がどれだけ難航しても、年度内に自然成立するからだ。「参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする」(憲法60条2)の規定が適用される。
反発した野党側は小野寺委員長の解任決議案や鈴木俊一・財務相の不信任案を提出して抵抗し、国会審議は異例の深夜に及んだ。
岸田首相が政倫審の裏で進める予算案の“茶番採決”まで、大谷選手の結婚報道で国民の目を誤魔化せると思っているとしたら甘すぎる。