(時事通信フォト)

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現在が“重用”と“依存”の境界線か

 フジテレビの2020年代における千鳥の重用をさらに進めているのが2022年6月に就任した港浩一社長。『とんねるずのみなさんのおかげです。』などこれまで多くのバラエティを手がけてきた港社長は就任以降、「明るく元気」「楽しくなければテレビじゃない」という同局のイメージを取り戻すような編成を主導しています。

 実際、昨年フジテレビは『ぽかぽか』『オールナイトフジコ』『THE SECOND~漫才トーナメント~』『FNS27時間テレビ』などの生放送バラエティを次々に手がけたほか、『まつもtoなかい』『オドオド×ハラハラ』『私のバカせまい史』のゴールデン帯レギュラー放送をスタートしました。

 また、そのシンボルとなる千鳥は昨年春から日曜ゴールデン帯に『千鳥のクセスゴ!』『千鳥の鬼レンチャン』の2番組を編成。「日曜夜は千鳥で裏番組以上に笑ってもらおう」という戦略がうかがえますし、スポンサー受けがいいコア層では時間帯トップクラスの個人視聴率を獲得しています。

 一見、『千鳥のクセスゴ!』は「お笑いマニア向けのネタ番組」、『千鳥の鬼レンチャン』は「よくあるカラオケ番組」と見られがちですが、千鳥がMCを務めることで笑いの手数が大幅にアップ。2人のツッコミやボヤキ、あるいはスタッフによる2人へのイジリなどで笑いを次々に生み出し、「あの番組ジャンルでこれだけコア層が獲れるのは凄い」などと他局のテレビマンを驚かせています。

 視聴率にシビアな日本テレビとテレビ朝日が冠番組をゴールデン・プライム帯で放送していないように、「千鳥を起用すれば視聴率が獲れる」というわけではないでしょう。ただそれでも千鳥はコア層、特に若年層からの支持が芸人トップクラスであり、配信再生も期待できるなど、フジテレビにとって重要な存在であることは間違いありません。

 ただ、すでにネット上には「フジテレビはまた千鳥?」という声が散見されるだけに、これ以上の起用は視聴者に“重用”を超えた“依存”という印象を与えてしまうでしょう。フジテレビは『THE SECOND~漫才トーナメント~』という中堅・ベテランの芸人を集めた漫才コンテストを開催しているだけに、そのファイナリストを積極的に起用して新たなシンボルにしていくなどの姿勢があっていいのかもしれません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

千鳥(時事通信フォト)

上方漫才大賞の奨励賞を受賞した千鳥(時事通信フォト)

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