ライフ

【新刊】高齢者の率直な感情テンコ盛り…内館牧子の“高齢者シリーズ”5作目『迷惑な終活』など4冊

快進撃の高齢者シリーズ5作目。男の身勝手終活が巻き起こす女達のドラマ

快進撃の高齢者シリーズ5作目。男の身勝手終活が巻き起こす女達のドラマ

 朝晩と日中の寒暖差が大きくなり、秋の深まりを感じられるようになったこの季節。いよいよ本格的な読書の秋におすすめの新刊を紹介する。

『迷惑な終活』/内館牧子/講談社/1870円
 終活という死の準備などしないと豪語する75歳の英太。終活の本義はやり残したことをすることだと高校時代のマドンナに謝罪するため新潟に出向く。迷惑な彼女には気づかず、英太はもう一人の同級生女性に“私には謝らないの”と言われ……。都合のいい思い出、都合の悪い過去。男って生来的に自己チューだなあと噴き出す。高齢者の率直な感情テンコ盛り。今回も快読です。

袴田死刑囚、“冤罪”の全貌。 我が国にも先進国並みの再審制度を!!

袴田死刑囚、“冤罪”の全貌。 我が国にも先進国並みの再審制度を!!

『袴田事件 神になるしかなかった男の58年』/青柳雄介/文春新書/1210円
先の9月26日、事件から58年を経て地裁で無罪判決が出た袴田事件。歓喜した。こんなに時間がかかったのは我が国の再審二重構造のせい。再審請求審(再審をして下さいという訴え)で再審開始の決定が出ても、検察の抗告でイタチごっこが繰り返される。先進国にこんな人権無視の制度はない。控訴期限はこの10月10日。検察は潔く控訴を断念し、袴田巌さんに真の自由を!

いつか死ぬ。でも怖い。そんな雑念が少しは鎮まった気が……

いつか死ぬ。でも怖い。そんな雑念が少しは鎮まった気が……

『どうして死んじゃうんだろう? いのちの終わりを巡る旅』/細川貂々/晶文社/1760円
 著者の分身テンテンと釈迦の高弟あなんが、ソクラテスやキリスト、宮澤賢治など死を深く見つめた賢者達に死ぬとはどういうことかを尋ねて回る。オマル・ハイヤームの詩にボブ・ディランの「風に吹かれて」の原型やゴーギャンの代表作“我々はどこから来て(中略)どこへ行くのか”が見て取れたのは発見だった。「涅槃経」のコミカライズ。涅槃経、不案内でお恥ずかしい……。

米国美術館の冷たい仕打ちなど舞台裏も。若冲ブームの立役者となった夫妻の肉声

米国美術館の冷たい仕打ちなど舞台裏も。若冲ブームの立役者となった夫妻の肉声

『若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語』/ジョー・D・プライス インタビュアー山下裕二/小学館文庫/759円
建築家ライトのお供で入ったNYの瀬尾商店で一目惚れした掛軸「葡萄図」。これがプライス氏の若冲コレクションの始まりだった。通訳悦子夫人との京都での出会い、オクラホマ自宅の若冲展示室、ロスの日本館建設など、山下氏が引き出す若冲ブームの立役者プライス氏の人柄は途方もなく無垢。若冲と言えば今秋、皇居三の丸尚蔵館で「動植綵絵 梅花皓月図」が見られますよ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年10月24・31日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン