国内

原子炉の稼働率が低いのはマスコミが原発に神経質過ぎるため

埋蔵量の限られる石油の代替エネルギー開発が世界中で進められている。環境問題への取り組みもあり、本命視されるのが原子力エネルギーだ。 大前研一氏はいまこそ日本の原子力産業が競争力を高めるべきだと説く。

* * *
いま日本がやるべきはフランスと並んで世界トップクラスの水準にある原子力技術を、ひたすら磨き上げ、輸出力を高めることである。 ただし、日本の原子力には泣き所がある。60%を切っている「稼働率」だ。

なにしろ、いま世界の原発受注競争で日本のライバルになっている韓国やフランスが商談で繰り出すセールストークは「日本の原子炉の稼働率は60%だが、我々は90%」なのである。

低い稼働率はどうしても発注側の不安を誘う。かくして日本はサウジアラビアで韓国に、ベトナムでロシアに競り負けることとなった。

そのくせ韓国もロシアも自信がないから、受注後に東芝に設計のレビュー(再確認)を依頼してきている。本来なら受注しておかしくないぐらい日本の技術力は海外でも高く評価されているのに、稼働率が低いという致命的な欠陥を抱えているのだ。

日本の原子炉の稼働率が低い理由は、国内の原子力アレルギーにある。マスコミに扇動されて世論が原子力を鬼っ子扱いし、些末なトラブルが起きたり、情報公開が1時間遅れて知事が遺憾を表明したりするたびに、安全性には問題がなくても、運転を止めて、全体の点検をすることになる。

霞が関の役人も責任をとりたくないために、実質的には知事の許諾で原子炉は稼働・停止を繰り返している、といっても過言ではない。 たしかに電力会社がつまらない操業ミスを繰り返し、時として情報をごまかすなどずぼらなことをやってきたのは間違いない。

とはいえ、もともと原子炉は90%以上の稼働率を想定し、定期点検で不具合などをすべて直すように設計されている。1回止めたら再び動かすのが非常に大変な上、熱ストレスもかかるため、安全面を配慮するなら、できる限り停止回数は減らすべきなのである。

原子力安全委員会は大衆迎合をやめ、地元住民やマスコミも神経質になりすぎて反対運動が目的化することは避けねばならない。

ナイーブな安全志向が逆にリスクを高めているという「逆説」を理解し、日本の原発が世界市場で競争力を持てるように官民メディアは支援すべきなのである。

※週刊ポスト2010年12月17日号

関連キーワード

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン