ライフ

勉強は本来楽しいものとノーベル物理学賞の益川敏英氏談

 2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英博士は「まさに子供に好奇心を持たせ、考える力を身につけさせることこそ教育の神髄です」と語り、教育現場には“学ぶことは楽しい”と思わせる雰囲気が必要だと説く。10年後、20年後の教育再興に向けた提言を聞いた。

 * * * 
 学生は学ぶことが面白いという感覚を身につけなくてはいけない。自分の頭で面白いと実感できることが大切なのです。僕は勉強という字が嫌い。刻苦勉励という言葉があるように、勉強には「辛く苦しい」というイメージが付きまとっている。

 でもスタディ(study)という言葉の源流は、ラテン語のストゥディオで「知る楽しみ」のことです。自分で問題を設定して答えを出していくという作業が楽しくないわけがない。本来の教育の姿がゆがめられているのは残念でならない。知ることが楽しいんだということを中学、高校時代に教えてあげる必要があると思います。

 教育現場では好奇心を羽ばたかせられる自由な雰囲気を大事にしたい。少し変なことをやると「そんなバカなことはやるもんじゃない」とか「お前はアホか」と言うような風潮はいけません。学生は興味のあることだったら、どんなことでも夢中になって取り組んでもらいたい。学びの中で感性を磨いていくことが大事だと思います。

 大学でも、昔はほとんど授業に出なくても試験だけはちゃんとできる奴がいて、周囲を驚かせたものです。自分が好きな分野なら1人でもとことん考えて勉強する。これに比べると今の学生はほとんど横並びで平凡。型破りな学生が少なくなっている。

 こうなった原因は、教育の問題もあるとは思うけど、それだけじゃないでしょう。今は社会が安定して、ハチャメチャに頑張って偉くならなくたって、そこそこの生活が送れる時代。そのレベルで満足して、そこからはみ出そうとしないからだと思います。

 僕と一緒にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎先生は30代ですでに教授にまでなっていらしたが、あえてアメリカに渡られた。日本で食うに困ったわけじゃないし、地位もあった。にもかかわらず刺激を求めて渡米された。今はそんな覇気のある人があまりいなくなった気がします。海外に出る留学生も減っているそうだけど、好奇心が旺盛な学生が少なくなっているのは残念なことです。

※SAPIO2011年1月26 日号


関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」