国内

震災からの復興に橋下徹府知事「首相待望論」が高まる可能性

 大震災を機に、橋下徹・大阪府知事の存在がクローズアップされている。同氏の「大阪都」構想は当初の目的から、大きくその役割を広げようとしている。そして、その“先”に待っているものとは何か。ジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

* * *
 橋下徹氏が知事就任直後から道州制を唱えてきたのは、国際競争力のある広域都市圏ネットワークの再構築、つまり大阪メガロポリスづくりを視野に入れていたからだと思われる。それには、発信力がある橋下氏が自ら「関西州首相」として先頭に立つのが早道だ。

 さらにその上で、橋下氏が大阪メガロポリスへの道筋を引くことができればどうなるか。危機の中、菅直人首相を筆頭に、リーダーシップなき政権が続き、“人材不足”が叫ばれる中央政界に失望した国民の間から、本当の「橋下首相待望論」まで高まる可能性が十分ある。現実問題として、道州制など地方への思い切った権限移譲は、国政を動かさなければ実現できない。

 司馬遼太郎のエッセイ『この国のかたち』の中で、大久保利通が東京遷都を決断した時のエピソードが出てくる。

 大久保の宿所に投書があり、首都を浪華(大阪)ではなく、江戸(東京)にすべき理由が、「浪華はべつに帝都にならなくても、依然本邦の大市である。江戸は帝都にならなければ、百万市民四散して、一寒市になりはてる」と、指摘されていた。

 昔からの商都・大阪は首都でなくても繁栄するが、幕府の中心として開発された江戸は、政治の中心でなくなれば衰退するという指摘だった。書いたのは若かりし前島密だという。

 だが、遷都から140年余り、東京では都市インフラの集積が進み、たとえ首都機能が移転しても「寒市」にはなるまい。むしろ、道州制で中央政府の権限を大幅に減らし、全国に分散すれば、霞が関はじめ東京の都心部に広大な遊休地が生まれ、都市機能の再構築を図るチャンスになる。

 震災による「東北復興」の一方で進む橋下氏のリーダーシップ、さらに“首相となる日”へと繋がる動きは、日本全体の都市再生へと結びつく可能性さえ秘めている。

※SAPIO2011年5月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
4月3日にデビュー40周年を迎えた荻野目洋子
【デビュー40周年】荻野目洋子 『ダンシング・ヒーロー』再ヒットのきっかけ“バブリーダンス”への感謝「幅広い世代の方と繋がることができた」
週刊ポスト
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン