芸能

間の取り方が抜群な柳家花緑に「七代目小さんに」の声上がる

 広瀬和生氏は1960年生まれ、東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。30年来の落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に接する。その広瀬氏が「七代目小さんに」と評する落語家が、柳家花緑である。

 * * *
 テレビや舞台などで幅広く活躍する柳家花緑。彼は「人間国宝」五代目柳家小さんの孫である。1971年生まれの花緑は1994年に戦後最年少の真打となった。正式な弟子として祖父小さんに入門したのは1987年だが、実際には9歳から落語を演っていたというから、既に約14年のキャリアがあったことになる。

 最近の花緑が試みているイベントに「洋服姿で椅子に座って新作落語を演じる会」がある。「現代を舞台にした噺なら、洋服のほうが落語ファン以外の層には自然に受け入れられるはず」という発想によるもので、扱う素材も新鮮だ。

 昨年は宮部みゆき原作の『我らが隣人の犯罪』を演じ、今年は「ニュースを新作落語に」というテーマに挑戦した。「奇を衒わず古典を真っ当に演るだけでいいのに」という批判もあるだろう。だが今の花緑はそれを恐れない。核となるべき「花緑の古典」の方法論を確立したからだ。

 いつも感心させられるのが、目線の使い方や「間」の取り方の抜群の上手さだ。ふとした瞬間に「さすが小さんの孫」と思わせる。これはもう、天性のものだろう。花緑の高座には、落語に取り組む「了見の良さ」がはっきり表われている。

 五代目亡き後、六代目小さんの名跡は花緑の叔父(五代目の実子)が継いだが、将来「花緑を七代目小さんに」という声があってもおかしくない。そんな「器の大きさ」を、今の花緑からは感じ取れる。

※週刊ポスト2011年7月8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン