国内

被災地の成人映画館84歳経営者「表現の自由守る」と意気込む

 様々な商業施設が営業停止を余儀なくされた被災地。その中でも復活を遂げた成人映画館が宮城県石巻市に存在するという。その現場を作家の山藤章一郎氏が報告する。

 * * *
 津波をかぶった東北唯一のポルノ映画館は、宮城県石巻市の表通りから電柱の裏を右にくぐり、バイクや段ボールがころがっている路地の奥にあった。壁に、乳もあらわな女たちのエロポスターがずらりと貼ってある。

 84歳のオーナー爺さんが、切符を売り、モギリをし、上映開始のベルを鳴らし、映写技師になって重いフィルムの掛け替えをし、場内清掃をし、館内の補修をする。

『石巻 日活パールシネマ』

 180席の「シネマ1」80席の「シネマ2」。

 スクリーンの3分の2までが海水に浸かった「シネマ2」で6月20日、津波から3か月ぶりに再開上映した。爺さんの名は清野太兵衛という。

 大正期から昭和、港町の男と女でにぎわうここで、父親が〈石巻歌舞伎〉の興行を打ってきた。跡を継ぎ、孤軍奮闘どっこいしょ、エロ映画の文化を守り続けている。

「椅子も全部泥だらけ。室内プールになりまして。最初は津波見物しとったんだが、どんどん水嵩が増して、車は流れてくる、船は揚がってくるで。ありゃ、こりゃただごとじゃねえなと。梯子で屋根に上って助かったの。

 津波が来ようが地震が来ようが、映画の灯は消しませんよ。われわれには表現の自由が約束されてる。ポルノでもなんでも、懸命に表現している人たちのためにも、私はこの映画館を閉じません」

※週刊ポスト2011年7月22・29日号

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン