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荒木師匠「男の役目は私たちの世話をすること」と語っていた

かつて『微笑』『新鮮』という女性誌があった。性を赤裸々に語った女性誌のさきがけとして知られるが、どんなエピソードがあったのか。作家の山藤章一郎氏が報告する。

* * *
「抱かれる女から抱く女へ」『微笑』は創刊号から〈性の解放〉を特集した。1971年(昭和46年)だった。前年、日本で初の〈ウーマン・リブ〉大会が渋谷で開催された。

以降、『微笑』は、〈解放〉を突っ走る。

――創刊の辞はこうだった。「これまで女性の幸福は結婚にあると教えられてきました」「しかし現在では、(男女のあいだに)真の愛情が底に流れているかどうかということがより重要になってきております」

この「男女の関係においては真の愛をいちばん大切なものと考える人、社会との関係においては家庭内に閉じこもらぬ行動的な女性たち」「これらの人をヤング・アダルトと名づけ、ともに新しい社会を形づくることを念願する」

1960年代後半の全共闘運動は概して、デモに行くのは男、女は後ろでおにぎりづくり、が状況だった。これを差別であると言いだした女たちによって日本の〈ウーマン・リブ運動〉が始まった。〈リブ〉は「Liberation」(解放)。

港区芝浦に、女たちには天下御免のディスコ〈ジュリアナ東京〉がオープンした。『微笑』創刊20年後だった。バブル期を象徴する店である。

連日踊り狂い「師匠」と呼ばれたボディコン・荒木久美子さんが懐かしむ。

「ウーマン・リブ運動? ありましたね。でも、なにそれって? そんなこといわなくても、あたしたち、男を後ろからついて来させてました。彼氏がいたら『何時までに帰って来い』とか『短いスカート穿くな』とかうるさいでしょう。だから私のまわりの女はほとんど彼氏はいなかった。

それで、職業は? と訊かれると『イケイケよ』と答えてました。男の役目はわたしたちの世話をすること。19歳頃からの処世術ですが、かわいい女友達をいかに多く連れていくかが重要でした。すると、おカネ持ってるオッサンがいいお酒、おいしいものを食べさせてくれる。

また、スタッフに紹介すると、ただで〈レディスVIP〉に坐らせてくれる。黙ってても、違うVIP席の有名人たちから呼ばれて、また高いお酒を飲み、車で送られたり、タクシー代をもらう。男と対等になる必要なんかない。聖子ちゃんの〈ぶりっ子〉が正しい時代でした。

それから『微笑』みたいな雑誌が予言した通りになったんですね。その後あたしたちの〈ジュリアナ〉が去ると、『Sex and the City』の世界ですよ。彼氏がゲイだったりすると、昔は隠してたと思う。いまは普通に口にしますよね。どんなに性格良くても体が合わなかったら無理だって、女の方からいえるし」

※週刊ポスト2011年8月5日号

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