ビジネス

ブラジル、南アほか 新興国通貨の特徴を3タイプ別に解説

 高金利でFX(外国為替証拠金取引)投資家の人気が高い南アフリカ・ランドや、通貨選択型ファンドで注目を集めているブラジル・レアル……。こうした「新興国通貨」の特徴について、外為どっとコム総研代表取締役社長・主席研究員の植野大作氏が解説する。

 * * *
 私が為替関係の仕事を生業にし始めた12年以上前、日本のお客様から新興国通貨について質問されることはほとんどありませんでした。それが最近では、南アフリカ・ランド、ブラジル・レアル、中国人民元などについての見解を求められる機会が増えてきています。長引く超低金利に促された日本人投資家の国際分散投資の裾野が地球的規模で拡大する中、投資信託などを通じて新興国にも資産の一部を配分する人が増えていることが背景だとみられます。

 一般に、新興国の通貨には先進国では期待できない高い金利や経済成長の魅力がある一方、それに見合った投資のリスクも共存しています。それら損益機会の特徴に照らして分類すると、新興国通貨には以下に示す3つのタイプがあるように思えます。

 第1は、「豊富な天然資源」の存在が、投資家の資金を惹きつける誘因になっている国々の通貨群です。このグループに属する代表的な新興国通貨としては、南アフリカ・ランド、ブラジル・レアルなどが挙げられます。

 周知のように、日本は食糧の自給率が低い上、エネルギーや鉱物資源の輸入依存度も極めて高いことで知られています。我々が「資源国通貨」に投資した場合、「資源価格の変動に投資損益が左右される」というリスクを負うことになりますが、資源輸入国に暮らしている日本人が資源輸出国の通貨に分散投資するという行動は、長期的なリスク分散の観点から理にかなっているといえます。

 第2は、先進国を凌駕する高い経済成長が、その国が抱える豊富な人口と相まって、「経済大国への変貌期待」を喚起している国々の通貨群です。この範疇に属する代表的通貨としては、中国人民元やインド・ルピーなどを挙げることができます。これら両国はともに天然資源が輸入超過なので資源輸出国ではありませんが、「かつての日本並みの高度成長を遂げて経済が発展する」というイメージが、人口減少社会に生活している本邦投資家の琴線に触れ、投資意欲を惹起する誘因となっています。

 ただし、現時点では債券市場の整備が不十分な面もあり、日本人のお金が流入する先は主に株式投資が中心になっているようです。よって長期的に見た場合、当該国に投資して儲かるか損するかは、通貨価値の変動よりも株価の振幅に影響され易いというリスクがあります。

 第3に、やや分かりにくいのですが、「短期的には高金利、長期的には構造改革期待」が投資家を惹きつける魅力の源になっている通貨群が存在します。トルコ・リラなどがその代表例です。資源国でもなく、人口大国でもないのに人気がある新興国通貨は、金利の高さで注目されることが多いのですが、そうした通貨は大概この範疇に属しています。

 トルコを例にすると、新興国特有の高い経済成長は見込まれますが、資源輸出や経済規模の面での圧倒的な強みはありません。将来ユーロへの参加を目指して構造改革を進めていますが、国の信用力がまだ低いので高い金利でないと借金できないという国です。

 要するに、第3グループに属する通貨群の高い金利は「構造改革の成否に対する不透明感」の反映という面があり、投資家は信用リスクの対価として高利回りを享受している面があります。このような通貨に投資した場合の本当の醍醐味は、高い金利収入もさることながら、構造改革が成功して国の信用力が向上するときに生じる債券価格や通貨価値の値上がり益を得ることにあります。

 トルコ・リラを引き合いに出すならば、構造改革が頓挫した場合のリスクもあるので、金利の高さだけに注目するのではなく、「ユーロ参加を目標に構造改革に取り組んでいるトルコの人達の頑張りを、どれだけ信用して応援する気になれるかどうか」を基準に、投資の是非を決めるのが望ましいといえます。

※マネーポスト2011年7月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト