ライフ

『モヤさま』伊藤Pの仕事作法 自分が凡人なのを自覚して泣く

『モヤさま』伊藤Pの仕事作法

2012年は「モヤモヤしながら」仕事しよう!? テレビ東京で人気のバラエティ番組「モヤモヤさまぁ~ず2」の「伊藤P」でお馴染みの伊藤隆行プロデューサーに「仕事」についてインタビュー。1回目は「自分の中の1%の天才を信じよ」。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)

* * *
――伊藤さんの「伊藤Pのモヤモヤ仕事術」を読んで、私がいちばん好きなのは「自分の中の1%の天才を信じよ」という言葉です。

伊藤:それは入社3年目くらいのときに、可愛がってくれていたおじさんの上司から新橋のスナックのカウンターで言われたんです(笑)。

「お前らみたいなアホ、普通の感性の人間でも仕事に向き合って好きになればそれなりに伝わるはずなんだ。天才じゃなくても、1%は天才の部分があると思って作らないと、それは視聴者に失礼に当たる。思ったものを素直にやんなさい。中途半端に繕った仕事はするなよ」という意味です。これはテレビの世界だけじゃなく、どんな仕事にも言えることだと思います。

――最初から妥協した仕事の仕方をするな、ということですか。

伊藤:そうですね。いきがって仕事をすればするほど早く壁にぶつかって、自分の中に凡人しかいないことが早くわかるから。その凡人を「1%の天才」と思ってしまえ、ということなんです。

仕事をしていると、自分の中の「核」みたいな部分が木っ端みじんに砕かれるときがあると思うんですよね。本当に大事にしているものが壊されたとき、人は泣くと思うんですよ。それが平気な人っていうのは、逃げているか誤魔化して仕事している人です。

人とはなにか違うものを達成したいとか、大きな夢を実現したいのなら、早く自分の中の凡人性を自覚して、泣いて、妥協しないで仕事するべきです。

でも入社試験の面接などで若い人と話をすると、ほんとネガティブな子が多い。「自分なんて就職できない」「草食系だから人と競うのは苦手」とか。

――伊藤さんの20代のころと違いますか。

伊藤:能力的には変わらないと思うんですよ。ただ考え方が後ろ向きなんです。僕から見れば20代前半なんてポテンシャルの塊にしかみえないのに。あとすぐ「僕らの世代は」と同属意識でモノを語る。それはよくないと思うんです。

僕と20年近くも歳が離れているのだから、どっちの感性が面白い番組作れるか競争しようぜと思うんですが、「ゆとり世代だよ」と挑発しても「ゆとってまーす」と笑う(笑)。「ゆとってねぇよ!」と言い返すぐらいの奴がいいんだけれどね。

――でも伊藤さんも、そもそもテレビ局志望ではなかったんですよね。

伊藤:もともと銀行志望だったんです。都市銀行から内定をもらっていましたし、日本銀行の面接もあとひとつというところまで来ていました。危なかったですよね、モヤモヤした気分で公定歩合上げ下げされたら、日本経済もたまったもんじゃないですよ(笑)。

テレビ局はテレ東だけ受験して、内定に縁を感じて入社しました。しかも最初は報道志望とか生意気なことを言ってた(笑)。

――それがテレ東を代表するバラエティ番組のプロデューサーになるとは。

伊藤:人様の力で生きてますから(笑)。いやこれは冗談じゃなくて、仕事はひとりではできないんですよ。タレントさん、番組スタッフはもちろんのこと、経理や総務まで含めたいろんな人たちの力をお借りして、自分の仕事が出来ていると実感しています。人に感謝しつつ仕事をする。これは勘違いしてはいけないことだと思います。

伊藤隆行氏プロフィール
1972年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒、テレビ東京プロデューサー。「モヤモヤさまぁ~ず2」「ちょこっとイイコト 岡村ほんこん しあわせプロジェクト」や、過去には「やりすぎコージー」など、同局の人気バラエティ番組の多くを手掛ける。著書に「伊藤Pのモヤモヤ仕事術」(集英社新書)

関連記事

トピックス

元皇族の眞子さんが極秘出産していたことが報じられた
《極秘出産の眞子さんと“義母”》小室圭さんの母親・佳代さんには“直接おめでたの連絡” 干渉しない嫁姑関係に関係者は「一番楽なタイプの姑と言えるかも」
NEWSポストセブン
岐阜県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年5月20日、撮影/JMPA)
《ご姉妹の“絆”》佳子さまがお召しになった「姉・眞子さんのセットアップ」、シックかつガーリーな装い
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《極秘出産が判明》小室眞子さんが夫・圭さんと“イタリア製チャイルドシート付ベビーカー”で思い描く「家族3人の新しい暮らし」
NEWSポストセブン
ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
川崎春花
女子ゴルフ“トリプルボギー不倫”で協会が男性キャディにだけ「厳罰」 別の男女トラブル発覚時に“前例”となることが避けられる内容の処分に
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日の親子スリーショット》小室眞子さん出産で圭さんが見せた“パパモード”と、“大容量マザーズバッグ”「夫婦で代わりばんこにベビーカーを押していた」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
《司忍組長の「山口組200年構想」》竹内新若頭による「急速な組織の若返り」と神戸山口組では「自宅差し押さえ」の“踏み絵”【終結宣言の余波】
NEWSポストセブン
第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン