国内

佐藤優氏 橋下徹氏の成功はニヒリズムを克服できるかどうか

 大阪市長・橋下徹氏を理解するために、歴史上のどの人物・思想と類比することが適切なのか。元外務省主任分析官・佐藤優氏が分析・解説する。

 * * *
 過去のどの政治家と比較すると橋下氏の特徴が鮮明になるだろうか。筆者は、1950年代の米国で活躍したジョセフ・マッカーシー上院議員(1908~1957年)との類比で現在の橋下氏を考察している。マッカーシー上院議員が展開した「赤狩り」(共産党員もしくはその同調者と見なされた者への激しい攻撃)は、マッカーシズムと呼ばれたが、これに橋下市長の手法は親和的だと思う。

 米国のジャーナリスト、リチャード・ロービアは、〈マッカーシーは重要な意味での全体主義者ではなかったし、反動でもなかった。こういう用語は主として社会的、経済的秩序にかかわるものだが、かれは社会的、経済的秩序には全く関心がなかった。

 マッカーシーが思想、主義、原理の領域においてなにものかであったとするなら、一種のニヒリストであった。かれは根っからの破壊勢力、革命的ビジョンなき革命家、理由なき反逆者であった〉(R・H・ロービア[宮地健次郎訳]『マッカーシズム』岩波文庫、1984年、16頁)と指摘した。

 マッカーシズムの嵐が吹き荒れたのは、わずか4年間に過ぎなかった。外交・防衛政策にポピュリズムを持ち込んだマッカーシーは、国益を害する存在になったので、政治、経済、メディアのエリートによって放逐されたのである。

 しかし、マッカーシズムによって反共主義が定着し、社会に寛容さがなくなった。橋下氏が敵を探し出し、それと対決する手法を取り続けるならば、いずれかの段階において、政治舞台から排除される。聡明な橋下氏はそのことに気づいているので、方向転換を考えていると思う。その成功は、橋下氏がニヒリズムを克服できるか否かにかかっている。

※SAPIO2012年5月9・16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン