1919年の発売以来、子供からお年寄りまで年代を問わず人気を集めるロングセラー商品「カルピス」。多くのコラボアイテムが複数メーカーから発売され、「カルピス」を愛する社員のレシピが本になって、『カルピス社員のとっておきレシピ』(池田書店刊)が発売されるなど、さまざまな展開を見せている。そうした“ブランド力”の強さは、どこにあるのか?
“子供の飲み物”と考える人もいるかもしれないが、カルピス社は少子高齢化社会の流れもあり、『大人の健康・カルピス』『「カルピス」プラス』といった健康志向の高い大人向け商品など、幅広いラインナップを持つ。
『大人の健康・カルピス』の「カルシウム&グルコサミン」などは、“気になってはきたけれど、軟骨成分のサプリを飲み始めるのには、やや抵抗感がある”といったポストシニア世代にとって、グルコサミンを抵抗なく、気軽に試してみるアイテムになりえる。こういった抵抗感を緩和できるのは、やはり確立されたブランドであり、身近な飲料であることが大きなポイントとなる。
そうした同ブランドの新展開としては、5月28日にゼロカロリータイプの『カルピスウォーター』<ゼロ>が発売される。飲料市場では、炭酸飲料を中心にゼロカロリータイプの商品が多数発売されており、カロリーを気にする消費者ニーズをとらえて人気となっているが、無糖の茶類などを除くと、意外なことに炭酸飲料以外の定番商品でのゼロカロリータイプは少ない。
「『カルピスウォーター』を評価いただいている風味面の特徴は、“甘ずっぱく爽やかな味わい”です。今回、ゼロカロリータイプの『カルピスウォーター』を開発するにあたり、一番意識したことは、味わいをそのままにゼロカロリーで楽しめることでした。
しかし、ゼロカロリーで『カルピスウォーター』の味わいを作り出すのは非常に難しく、なかなかイメージする味わいを具現化することができませんでした。甘味料の配合技術など当社が永年にわたり培ってきた“甘くおいしい飲料を作る技術”により、ついに妥協のないゼロカロリータイプの『カルピスウォーター』<ゼロ>の開発に成功することができました。
カロリーが気になり甘系飲料に手を出しづらくなってしまった、30~40代の大人の方を中心に、充実した味わいを楽しんでいただきたいですね」と、カルピス 飲料事業部商品開発グループ・田中孝一郎さん。
“ゼロ系飲料はおいしくない”という先入観を持つ人もいるが、実際に飲んでみると、口の中にパァっと広がる『カルピスウォーター』ならではの、甘酸っぱい味わいはそのまま。さらに、ゼロカロリーということもあってか、すっきり感が増し、のどごしもよりさっぱりした印象に仕上がっている。
■コラボのオファーも多い
こうした主力商品のバリエーションを広げる一方で、『「カルピス」アイスバーマルチ』(ロッテアイス)、『「カルピス」もち』(日本橋菓房)、『「カルピス」マシュマロ』(エイワ)、『「カルピス」アソートキャンディ』(カンロ)といったコラボ商品も多い。
「現在のお取り組み企業は10社弱、発売中の商品アイテムは10を超えます。多くが『カルピス』のブランドを評価していただいた企業様から、コラボの話が寄せられて商品化されたもの。
コラボ商品の充実に伴い、スーパーなどの店頭では『カルピス』コーナーが広がり、飲料だけでなく、いつでも、どこでも、さまざまな形で『カルピス』の味わいを多くのお客様に楽しんでいただけるようになってきました。
そうした中で、ただ単にカテゴリを広げるのではなく、ブランド価値を守りながらコラボ展開をさせていただいており、『カルピス』ならではの味わいや水玉のデザインなどのルールに沿った商品開発にご協力いただいています」と話すのは、コラボ商品を担当するカルピス 業務用事業部・山重雄一朗さん。
カルピス社の調べによると、日本人の99.7%が「カルピス」を飲んだことがあり、初めて飲むタイミングの9割は小学生までだという。“誰からも親しまれる”という貴重な財産を生かし、子供時代だけでなく、さまざまな形でずっと「カルピス」を飲み続けてもらい、またその子供に「カルピス」を伝えてもらう、といったサイクルがカルピス社の目指す目標だという。
老舗企業のロングセラー商品は数多くあるが、“懐かしい味”ではなく“常にある味”へと進化することは高いハードルだ。自社商品の充実と合わせて、ブランド力を薄めることなく多彩な広がりを続けることで、そのハードルを超える――そうした展開力が「カルピス」ブランドの強さの一因のようだ。