国内

好調のJAL 既に削減限界で成長に改革逆行必要と大前氏指摘

 JALは赤字路線を廃止して「事業そのものを縮小すること」で利益が出る体質に転換し、V字回復した。しかし再上場するからには、コスト削減を主体とした「稲盛改革」に続く「成長シナリオ」を示さなければならないと、大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。

 * * *
 経営再建中のJAL(日本航空)が東京証券取引所に上場を申請し、審査が順調に進めば、9月19日に再上場の見込みとなった。2010年1月に会社更生法の適用を申請して上場廃止になってから約2年8か月で株式市場にスピード復帰することになる。

 たしかにJALの業績は絶好調だ。営業利益は2011年3月期が1884億円、2012年3月期2049億円と2年連続で過去最高を更新した。無給で会長に就任して経営再建にあたった稲盛和夫氏(現在は名誉会長)が、従業員の3割に相当する1万6000人の削減、赤字路線の廃止、燃費が悪いB747など航空機の売却、グループ内に4社あった機体整備会社の統廃合など、これまで社内の人間にはできなかった大規模なリストラを断行して徹底的にコストを削減した成果である。短期間で経営改革を成し遂げた稲盛氏の手腕は、素晴らしいの一言だ。

 ただし、今後もJALが好決算を持続できるかといえば、甚だ疑問である。なぜなら、まず過去最高益の中身が、航空機の資産価値見直しで特例により減価償却費が減少したことや、利益が出ても経営破綻時に発生した多額の赤字(繰越欠損金)で相殺できるため当面は法人税を支払わなくて済むなど、会社更生法適用に伴う一時的な要因が大きいからである。

 また、経営破綻前の2008年度と直近の2011年度のコスト構造を比較すると、事業費は約1兆7000億円から約8500億円に、販売費・一般管理費も約3000億円から約1500億円に半減している。

 だが、売上高も1兆9500億円から1兆2000億円へと4割も減少し、旅客数(国際線と国内線の有償旅客数)も、2008年度の5285万人から2011年度の3581万人に3割以上減少している。つまり、基本的にJALは赤字路線を廃止して「事業そのものを縮小すること」で利益が出る体質に転換し、V字回復したわけである。

 しかし再上場するからには、コスト削減を主体とした「稲盛改革」に続く「成長シナリオ」を示さなければならない。すでに削るほうは限界まで削ってしまったので、これからコスト削減効果を生かして反転攻勢に出るためには、売り上げを増やす必要がある。

 では、売り上げを増やして成長するためにはどうすればよいのか? 稲盛改革の逆を行く「路線を増やす」「残っている路線で便数を増やす」のどちらかしか方法はない。

※週刊ポスト2012年7月20・27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン