国際情報

チェルノブイリ事故の除染 ほとんど効果なく多くは打ち切り

 ベストセラー『がんばらない』の著者で、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、東日本大震災の被災地支援のため、たびたび現地入りしている。そして、チェルノブイリの子供への医療支援にも取り組んだ経験を持つ鎌田氏が、被災地の現状と除染の問題点について語った。

 * * *
 東日本大震災から1年4か月。被災地から遠い所では、あれほどの衝撃を与えた大震災も風化し始めている。しかし、まだまだ被災地では不安で、困難で、辛い生活をみんなが強いられている。

 先日、まだ足の骨折が回復途上にある僕は、足を引きずりながら、福島の高校で「教科書にない1度だけの命の授業」を行なった。そしていまでも、みんなが深い傷の痛みに耐えながら生きていることを痛感した。

 最近、政府が算出した福島県民の帰還試算の予測値がある。それによると、現在年間20ミリシーベルトを超える地域の住民は、福島県人口の64%に当たる。

 いまから5年後、福島第一原発のある大熊町や双葉町では、大熊町で97%、双葉町では75%、10年後でも大熊町で82%の人が帰還できないと推測されている。20年後でも大熊町は32%、双葉町では18%の人が、実は故郷の実家に帰れないのだ。

 除染が成功すれば、もう少し早く帰れる可能性はあるが、放射性物質は移動させることはできるが、消すことはなかなかできないのである。

 チェルノブイリ原子力発電所の事故で汚染された地域でも、除染が行なわれたが、ほとんど効果は見られず、揚げ句、除染作業は多くの地域で打ち切られた。

 高汚染地域に住居を持っている被災者のことを考えると、“除染”という「希望」が大事なことはよく分かる。が、しかし、常に費用対効果も考え、的確な方針の軌道修整もなされなければいけないと思う。

※週刊ポスト2012年8月3日号

関連記事

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン