国際情報

台湾企業「日本を知り抜き中国を使えるから強い」と大前研一

 日本のエレクトロニクスが危機に瀕している。各社が空前の赤字を計上し、半導体大手のルネサスはついに国内の工場の半分以上を閉鎖・売却する大規模リストラに追い込まれた。不況、大震災の後遺症……経営不振の理由はいろいろあるが、大前研一氏がシャープの経営危機について解説する。

 * * *
「鴻海がシャープを丸ごと買収するのでは」といった話が新聞を賑わせている。

『日本経済新聞』電子版(6月25日付)によれば、シャープと資本提携したEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の台湾・鴻海精密工業を率いる郭台銘(テリー・ゴウ)会長が、「今のおたくの株価なら、うちはシャープ本体を丸ごと買収することだってできるんですよ」と、シャープ幹部にすごんでみせたという。
 
 だが、これらの報道は表層的だ。そもそも、なぜシャープは3800億円もの大赤字を出して経営危機に陥ってしまったのか? その根本的な理由を考えねばならない。

 答えは「台湾企業の勃興」である。いまエレクトロニクス分野では、台湾勢が圧倒的に強い。鴻海だけでなく、PCや周辺機器メーカーのASUS、ノートPC受託生産大手のクアンタ・コンピュータ(広達電脳)やウィストロン(緯創)など約10社がグローバル市場を席巻している。

 台湾勢の強みは、日本を知り抜いていること、中国を自由自在に使えること、世界に売る方法がわかっていることだ。

 いずれの会社も、日本から機械、基幹部品、基幹材料を買ってきて中国で組み立て、世界中に売りまくるというパターン(チャイワン・モデル)である。そういう点では、韓国のサムスン電子も同じ成功の方程式を持っている。

 台湾は世界から「国家」と認められず、国連にも加盟できないので、国民も企業も危機感を持ち、日本に学びながら勉強を続けている。だから日本が強かった半導体や家電分野で強くなり、今や日本を凌駕するようになったのである。

※SAPIO2012年8月22・29日号

関連キーワード

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン