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アップルやグーグルが日本に登場せぬ理由は旧財閥系への優遇

 旧財閥系企業が絶好調だ。2012年3月期連結決算で、五大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)の純利益は過去最高を記録した。その背景と歪みについて、大前研一氏が解説する。

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 財閥系の大企業が大儲けしている。

 2012年3月期連結決算を見ると、五大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)は純利益の全社合計が1兆6116億円となり、過去最高を記録した。3メガバンクの最終利益も三菱UFJフィナンシャル・グループが前期比68%増の9813億円、三井住友フィナンシャルグループが同9%増の5185億円、みずほフィナンシャルグループが同17%増の4845億円で、3行の合計は約2兆円に達している。

 不動産大手5社(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、野村不動産)は東日本大震災の影響を受けたにもかかわらず、最終利益は全社合計で2115億円だった。まさに笑いが止まらない状況なのだ。

 とくに商社は、円高で多くの企業が青息吐息の中、差益を十分に利用している。加えてこれほど商社が強いのは、原油や鉄鉱石などの資源価格が高騰したからだ。純利益に占める資源分野からの利益の割合は、約4割の住友商事を除く4社はすべて5割を越え、三井物産は8割に達している。

 油田や鉱山などの資源開発は長期でハイリスクの事業であり、なかでも地下深く埋蔵されているシェールガスなど非在来型天然ガスの採掘には高度な技術と多大な初期コストが必要となる。だが、五大商社には系列銀行などがいくらでもファイナンスしてくれるから、開発プロジェクトを数多く手がけることができる。資源開発は、たくさん掘れば当たる確率が高くなるので、潤沢に資金を集められるところが勝つのである。

 不動産も同様で、三井不動産や三菱地所といった財閥系の不動産大手は十分な資金をもとに大規模開発で収益を上げている。とくに最近はこの2社が全国で大規模アウトレットモールを続々と展開し、商店街や地場の百貨店を直撃している。

 裏を返せば、メガバンクをはじめとする日本の銀行は、五大商社・不動産のような系列の大企業には手厚い一方で、中小企業や起業家へのファイナンスには極めて消極的だ。日本にグーグルやアップルやフェイスブックのような新しい成長企業が登場しない究極的な理由が、そこにある。

※週刊ポスト2012年9月14日号

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