国際情報

中国の反日デモ 教授が参加学生呼び出し、就職に響くと注意

 世界でトップニュースとなった「9・18」の反日デモ。翌19日になると中国の公安当局はデモの参加者の拘束を発表し、一斉に沈静化に向けて動き出した。中国に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が解説する。

 * * *
 中国が「国恥の日」と定める9月18日のデモこそが鍵ーー。

 前回の原稿で書いた通り、反日デモの勢いが失われたと判断した中国政府は一転して抑え込みへと舵を切った。が、実は、18日のデモが勢いを失ったことの裏側には当局の必死の工作があった。

 中国にとって都合が良かったのは18日が祝祭日と重ならなかったことだ。ウィークデイであれば、仕事や学校という組織を通じて党の毛細血管のような命令系統が機能するからだ。

 例えば学校であれば、教育部の系統が機能する。反日デモに参加しようと呼びかけている学生があれば呼び出して教授に注意させるといった具合だ。就職に響くとなれば効果は絶大だ。

 また工場であればその工場の書記の責任者が効果を発揮する。万一、その工場からデモに参加して違法行為を働いた者があれば、その人物が裁かれるだけではなく書記も地位を失うという連帯制度なので、それぞれの長が必死に止めるのである。

 さらにアナログな対応では、横断幕をつくるのに必要な大きな赤い布を買っていく者や大量のマジックを買い込んだ者、また通常のサイズではない大判のコピーを賛成するような店にも狙いを付けて、訪れる者の後をつけて警察署に呼び出すというやり方も採られている。

 現在ではネットの掲示板や微博(ミニブログ)にデモの呼びかけを出した者を特定することも簡単だという。

 このように当局が危機感を募らせ、一気に抑え込みに動いた背景には、やはり野放しにすれば政府への怒りに転嫁しやすく、その規模も中国の治安のキャパを越えてしまう可能性を秘めていたからだ。

 一つの省に一つのデモ程度であれば別の都市から武装警察部隊を異動させて厚い備えができるが、今回の広東省のデモのように深圳市、東莞市、広州市という近い都市で比較的大規模なデモ――というより暴動だった――が起きれば互いに応援を要請することもできなくなる。それゆえ、最終的にはデモ隊に向け催涙弾を撃つしかなかった、というわけだ。


関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
イメージカット
「有名人なりすまし広告」の類に“騙されやすい度”をチェックしてみよう
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン