ライフ

面倒くさくて痛々しいけど憎めない“早稲女”について綴った書

【書評】『早稲女、女、男』ワセジョ・オンナ・オトコ(柚木麻子/祥伝社/1470円)

【評者】内山はるか(SHIBUYA TSUTAYA)

 どうやら第三の性別“早稲女(ワセジョ)”というものがあるらしい。

 性別?いや人種といってもよいかもしれない。早稲女とは早稲田大学に通う女子、もしくはOGのことを指す。性質としてプライドが高く負けず嫌い、自意識過剰で自虐ネタが大好物。この自虐グセで周囲を辟易させることも少なくない。

 ガサツで男勝りだが世話好きで面倒見が良い。極めつきに、頭の良い酒豪ときている。面倒くさい、鬱陶しいと思う半面、1本ピシッと芯の通った早稲女のブレない生き方はうらやましく眩しく感じるのだ。

 御多分にもれず立派な早稲女、早稲田大学4年、早乙女香夏子。器量も男受けも悪くない中の上を器用に生きる、立教大学4年、立石三千子。

 とにかくMY王子様がほしい! そのためには努力は惜しまない。モテ女子武装カンペキ、サークルのアイドル的存在、日本女子大学2年、本田麻衣子。

 石橋を叩いて渡るタイプ、堅実なコンサバ女子。内面では普通であることに物足りなさを感じている、学習院大学1年、早乙女習子。

 恋も仕事も守備よく立ち回るザ・デキる女。常に未来を想定し計画的に生きる、慶應大学卒業生、慶野亜依子。

 都会の風にあおられて地味な自分にサヨナラ。とにかくオシャレでかわいければOKの、青山学院大学4年、青島みなみ。

 この物語は早稲女と早稲女を取り巻く5人の女子たちの喜び、苦悩の日々そして成長を綴った女子小説だ。

 柚木麻子さんは人物を描くのがすごくうまい。特に女を描くのは格別に巧いと思う。彼女の描く人物は誰も立体的でリアル、女子たちの攻防はかなり面白い。読みながら自然と自分や友達が重なってきてしまう。女子のやりとりにイラッとしたり、同情したり、応援したり…ちょっと他人事とは思えない。います! こういう人々、いや自分も含めて。あー早稲女、鬱陶しくて面倒くさいけど愛すべき存在なのだ。

 読んで共感しない女子はいないハズだ、間違いなく面白い! 是非、女子のかたご一読を!!

※女性セブン2012年11月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン