国際情報

もし大前研一が竹島、北方領土、尖閣諸島の交渉担当だったら

 日本の存在感が国際社会で薄れている根本的な原因は、日本人が「世界で戦える力」を失ってしまったことである。経営コンサルタントの大前研一氏は、再び世界に雄飛する日本人になるために、領土問題について逆転の発想ともいえる交渉術を提案した。

 * * *
 竹島が日本領土であることは歴史的に見て間違いないし、韓国が1952年に不当な「李承晩ライン」を勝手に設定して占拠したことは紛れもない事実だ。しかし領土問題は正論をぶつけるだけでは解決しないことも我々は学んでいる。

 もし私が交渉官だったら、韓国、中国、ロシアとの領土問題は「真の国益」を考えて逆転の発想をするだろう。

 まず竹島は「韓国にあげましょう。その代わり日本に何をくれますか?」と質問する。肩すかしを食わすのである。「あげる」と言われれば韓国側も交渉のテーブルにつかざるを得ない。が、引き換えに渡せるものは何もないはずなので、最低でも現状の不法占拠状態を脱して共同管理、共同利用くらいにはなると思う。

 北方領土については、ロシアが中国やノルウェーと国境問題を解決した方法にならう。係争地の面積を二等分する「大ウスリー島方式」をプーチン大統領に持ちかけ、同時に極東ロシア開発に対する投資や経済協力、北方領土に住んでいるロシア人の処遇に関する提案など20くらいのリストを示す。

 極東ロシア開発を重視しているプーチン大統領は、すぐ応じるだろう。半分の返還では不十分だという意見はあるだろうが、面積二等分なら国後、歯舞、色丹のすべてと択捉の一部が含まれる。実質的には大部分が返ってくるようなものだ。ギリギリ許容できる妥協点ではないか。

 もともと北方領土に不法占拠や固有の領土という議論は成り立たない。第2次世界大戦の終結にあたってスターリンが北海道南北分割論を持ち出したため、トルーマンが北方四島を差し出した、という経緯があるからだ。

 尖閣諸島に関しては、実は中国は周恩来、鄧小平以来「棚上げ」にして日本の実効支配を認めているので、日本がアグレッシブなことをしなければ日本の実効支配は失われない。あえてここで国有化を進めるというのは「棚上げ」の密約に反するのだ。

 この問題は現状を変えない、争わないことがベストなのである。もし周辺海域で原油などの資源が出たら、費用負担も含めて商業ベースで話し合えばよい。

 このような考えには「中国や韓国におもねるのか」という批判が出るだろう。しかし、たとえば中国と今のように主張のぶつけ合いをして、現に国益につながっているのか考えてもらいたい。

 本当に愛国心を持って国益を考えるなら「棚上げ」は有効な戦略であり、ドイツのようにノブレス・オブリージュで妥協できるところは妥協することこそ国益を守る道なのだ。

※SAPIO2012年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

サンシャインシティ文化会館を訪問された佳子さま(2026年1月30日、撮影/JMPA)
《メイク研究が垣間見える》佳子さま、“しっかりめ”の眉が印象的 自然なグラデーションを出す描き方、ナチュラルなアイシャドウやリップでバランスも
NEWSポストセブン
ハナ被告の相次ぐ麻薬関連の容疑は大いに世間を騒がせた(Instagramより。現在は削除済み)
《性接待&ドラッグ密売の“第2の拠点”をカンボジアで計画か》韓国“財閥一族のミルク姫”が逮捕、芸能界の大スキャンダル「バーニング・サン事件」との関連も指摘
NEWSポストセブン
選挙を存分に楽しむ方法とは(写真/イメージマート)
《盛り上がる選挙戦》大人力を発信するコラムニストが解説する「“危険な落とし穴”を避けつつ選挙を楽しむ方法」とは?「政見放送に勝手にツッコミ」「みっともない人を反面教師にする」
NEWSポストセブン
アワードディナーに初めて出席した真美子さん(提供:soya0801_mlb)
《鎖骨見せワンショルで“別人級”》大谷翔平の妻・真美子さん、晩餐会ファッションで見せたジャパン推しの“バランス感覚”【専門家が解説】
NEWSポストセブン
新しい本屋ができたと喜んだが……(写真提供/イメージマート)
コンビニすらなかった郊外や地方に新規開店するポツンと書店、ビデオ試写室が併設されるケースも 子供から「何が見られるの?」と聞かれ親は困惑
NEWSポストセブン
インフルエンサーのニコレッテ(20)
《南米で女性398人が誘拐・行方不明》「男たちが無理やり引きずり出し…」メキシコで人気インフルエンサー(20)が生きた状態で発見される【生々しい拉致映像が拡散】
NEWSポストセブン
公用車事故で乗客が亡くなったタクシーの運転手が取材に応じた(共同通信/hirofumiさん提供)
「公用車の運転手は血まみれ」「お客様!と叫んでも返事がなく…」9人死傷の公用車事故、生き残ったタクシー運転手が語った“恐怖の瞬間”「官僚2人がストレッチャーで運ばれていった」
NEWSポストセブン
およそ4億円を強奪した”黒ずくめ”の3人組はいったい何者なのか──(時事通信)
《上野・4億円強奪事件》「『キャー!!』と女性の悲鳴も」口元を隠した“黒ずくめ3人衆”が道路を逆走し暴走、緊迫の一部始終と事件前から目撃されていた「不審な車両」
NEWSポストセブン
女優・唐田えりか(Imaginechina/時事通信フォト)
唐田えりか(28)が「撮影中に感情移入して泣き出してしまった」背景とは…訴訟映画『恋愛裁判』の撮影現場で見せた“並々ならぬ思い
NEWSポストセブン
市川中車(右)と長男の市川團子
《大河ドラマに大抜擢》香川照之が導いた長男・市川團子と小栗旬の共演 作中では“織田信長と森蘭丸”として主従関係を演じる
週刊ポスト
SixTONES
《デビュー6周年》SixTONES&Snow Manの魅力を山田美保子さんが分析「メンバーそれぞれに“強み”がある」「随所で大きな花を咲かせたのはジュニア時代からの努力の賜物」
女性セブン
送検のため警視庁本部を出る佐藤伸一容疑者(右:共同)
《“色白すべすべボディ”の“ちっちゃい峰不二子”に…》「金もってこい!!」カリスマ東大教授が高額おねだりで収賄疑い…夢中になった”バニーガール風俗”の実態
NEWSポストセブン