11月15日で横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されて35年が経つが、いまだに拉致問題解決の糸口は見えない。めぐみさんの両親である横田夫妻も、滋氏は79歳、早紀江さんは76歳となった。2人が語る。
――講演活動を続け、政府に訴え続けているのに、拉致解決に向けて一向に進展がない。
滋氏:1997年に「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」を結成しましたが、最初の5年間は、「拉致なんて本当にあるの?」というのが一般の人の反応でしたし、新聞ですらあくまでも「拉致疑惑」という報道スタンスでしたから、その時から見れば今は雲泥の差なんですが……。
――国民の理解が広がりつつある一方で、まだ政府を動かす力になりきらない。
早紀江さん:本当にそうですね。国会議事堂であれだけの国会議員が扇形にぎっしり座っている中でどれだけの人が、「もしわが子が拉致されていたら」と、自身に置き換えて考えてくれているのだろうといつも不安な気持ちになります。
滋氏:政府は、日朝間の拉致交渉について、野球で言えば北朝鮮にボールを投げて投げ返してくるのを待っている状態だと言っています。だったらボールを早く投げ返すように相手に言わなければ何も起きないのですが……。日本もこの先、民主党政権が続くのか自民党政権に戻るのかが見えず、北朝鮮も拉致を交渉カードに日本からおカネを引き出せるか読めないでいるのでしょう。
―― 一方、拉致解決を声高に訴えれば、拉致被害者家族のエゴだと批判する人もいます。
早紀江さん:とにかく、自分たちでは北朝鮮に乗り込むこともできないですから、進展がなくても政府にお任せするしかありません。
――「家族を思う」という誰もが持つ気持ちが、国家同士のぶつかり合いで押し潰されようとしている。
早紀江さん:私たちに言えるのは「わが子が拉致されたら」と親身に考えてもらいたいということだけです。めぐみもきっと諦めないで頑張っている。こんなに豊かな日本という国で暮らしている私たちが諦めるなんて言うことはできません。
※SAPIO2012年12月号