国内

団地リノベーションが若者に人気 単身女性にも最適と専門家

 年が明け、引っ越しや住み替えを思いめぐらす季節が近づく。昨年から引き続き、今年も注目を集めそうなのが「団地」だ。団地がリノベーションで再生を遂げつつある。

 昨年、観月橋団地(京都市伏見区・UR賃貸住宅)が、グッドデザイン賞のサステナブルデザイン賞を受賞し話題となった。独立行政法人都市再生機構(UR)は築50年を経た賃貸住宅のリノベーションを、若い世代を意識し、民間事業者に委託。個性的な中古物件などを紹介することで人気の「東京R不動産」の運営に携わる馬場正尊氏などが設計を手掛けた。「KANGETSUKYO DANCHI」として生まれ変わった団地は、子供を持つ30代を中心に、抽選になるほどの人気を集めたという。

 団地再生の動きは全国でみられる。URの一例を紹介しよう。

■たまむすびテラス/多世代交流型賃貸集合住宅(多摩平の森)
 こちらもグッドデザイン賞を受賞。住居のリノベーションにとどまらず、団地をコミュニティごと見直した先進的な例として話題を呼ぶ。シェアハウス、菜園付き共同住宅、高齢者向け住宅などを整備。

■MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト
 良品計画の子会社で住宅などを販売するムジ・ネットとURが提携。ムジ・ネットは、約55万人のネット会員らとのインターネット上での意見交換を通じて、アイディアを提案する。家具などには無印良品の商品を活用。新千里西町(大阪府豊中市)、泉北茶山台二丁(大阪府堺)、リバーサイドしろきた(大阪市)の3か所がまずは対象。

■DIY住宅、Petit(プチ)DIY住宅(藤沢台第5・大阪府富田林他)
 DIYができる賃貸住宅。壁を塗る、床を張る、棚を取り付けるといった部屋の一部改造から、キッチンや浴槽の取り換えまで可能。若者のDIY熱の高まりもあって人気が高く、今後、増やしていく方針という。

 そもそもURが団地再生に乗り出した背景には、独立行政法人としての経営上、建て替えが困難になったという事情がある。2007年にURが出した方針では、管理する賃貸住宅約77万戸(2007年時点)のうち、新規に建て替えを行うのは約3万個。約57万戸は、耐震診断などを行った上で、既存の建物を活用していくという。急速な高齢化も進む中、団地の再生は急務となっている。

 団地からDANCHIへ――。こうした動きを専門家はどう見るのか。住宅ジャーナリストの櫻井幸雄氏に聞いた。

「一番の魅力はその安さです。購入するにも借りるにも、民間の住宅より割安です。賃貸の場合、最近は入居条件なども緩和され、一人暮らしでも入りやすくなっている。特に高齢の女性の一人暮らしの方などには向いていると思います。高齢になると、民間の物件は、孤独死などを恐れてどうしても貸したがらない。保証人なども必要になります。その点、UR物件は入りやすい。地域コミュニティが育てばなおさら住みやすくなるでしょう。

 ですが、購入する際には注意が必要。“耐用年数”をよく確認してください。ある人は、購入した3年後、突然、建て替えが必要になったと言われ途方にくれていました。古い物件が多いので、この点がネックになるでしょう」

 また、団地特有の条件も指摘する。

「昭和30~40年代に建てられた団地は、駅から遠いなど、やや交通不便な場所が多いんです。民間に気遣ったためですね。便利な場所に建つ団地もあるけれど、家賃が高くなる。ただ、駅から遠いことを不便と考えるか、静かな良環境だととらえるかは、人それぞれ。ニーズに合わせて団地を選択肢に入れるとよいのではないでしょうか」

 高度経済成長の終えんとともに、過去のものとなっていった団地。有吉佐和子が『夕陽カ丘三号館』で描いたような団地特有のしがらみも、団地のマイナスイメージにつながっていた面もあった。だが、新しい価値観と新しいつながりを求める時代の到来とともに、再び団地が脚光を浴びている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン