芸能

名脇役平泉成 「お金さえくれれば、どんな役でもよかった」

 名優たちには、芸にまつわる「金言」が数多くある。映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、その言葉の背景やそこに込められた思いを当人の証言に基づきながら掘り下げる。今回は、人気俳優・平泉成の仕事に対する姿勢を紹介する。

 * * *
 一九六三年に大映で役者デビューした平泉成は、京都撮影所で時代劇を中心に四年、東京撮影所に移籍して現代劇を四年こなしながら、キャリアを重ねていく。だが、大映は七一年に倒産してしまい、平泉はフリーの身に。

 以降はテレビドラマに活躍の場を移した。特に七〇年代の出演数は凄まじく、脇役や悪役でのゲスト出演を中心に時代劇・現代劇を問わずに出まくり、ほぼ毎週、なんらかの作品で平泉の姿を見かけることになる。

「その時期は、もう映画のことは忘れよう、テレビを本気でやってみようと思っていました。主役クラスではないから、脇でいいと。それならどんな役でも徹底的にやってみようと思ったんですよね。そうやって経験を積んで、なんとか腕を磨いて、それで子供の学費を払おう。そういう発想が一番強かった。

 自分は高校しか出てなかったけど、子供にはせめて大学くらいは出してやりたくてね。かっこいい役をやりたいなんて、そんなわがままを言っていられる状況ではなかったんです。お金さえくれれば、どんな役でもよかった。『自分の夢のために家族が路頭に迷っても』って、そういうタイプでもないというか。俳優というのを『自分が選んだ仕事』と考えた時に、その仕事で家族を養えなくてどうするんだというのがありましたね」

※週刊ポスト2013年4月5日号

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