国際情報

日本以上に厳しい韓国の就活 サムスン電子の倍率は700倍

「大学新卒者が5人集まれば正規雇用は1人だけ。3人は非正規、1人は無職」と言われる韓国の就活事情は日本以上に深刻だ。韓国在住ライターの平井敏晴氏がリポートする。

 * * *
 韓国の学年度が終わる2月中旬、かつて日本語講師として教壇に立っていた大学の学生から、こんな連絡が来た。

「昨日卒業式だったのですが、私の学年はほとんど来ていませんでした」

 その理由は就職留年。ある者はすでに秋から留学中で、ある者は就活で失敗し、卒業すると不利になるからと在学期間を延長したのだそうだ。韓国学生の就活は日本以上に厳しい。

 英語のほかに日本語か中国語の習得を、ほとんどの会社が求めている。誰もが憧れる財閥系企業ともなるとハードルは極めて高く、会社側は否定しているが、TOEICで990点満点中、800点以上でないと履歴書すら見てもらえないという。

 全企業数に対してサムスン電子やLGエレクトロニクスといった財閥系企業が占める割合は、わずか1%に過ぎない。しかし、主要財閥10グループの総売り上げはGDPの約75%を占める。その入社試験の倍率は少なくとも数百倍で、トップのサムスン電子に至っては700倍とも報じられている。まさに針の穴をかい潜るようなもので、秀才が集中するソウル大学ですら、就職率は50%に満たない。

 韓国では、大学4年生の下半期が始まる9月に履歴書を送り、採用が決まるのは卒業間際だ。1回で就職が決まるケースは稀で、就活が何年も続く。途中、語学留学する者も少なくない。

 大学に入ってから就職を意識する日本と違って、韓国では早いうちから就職を念頭に教育される。小学生で外国語の習得に勤しみ海外研修にも参加。選ばれし者は外国語高校で学び、さらに大学入学後には英語+第2外国語のスキルアップだけでなく、目指す企業が個別に入社条件として指定する資格試験の合格を目指して猛勉強を続ける。

 書類審査では大学の成績も大きく考慮されることから、期末試験での激闘と、成績に不満がある者の教授への異議申し立ては当然のこと。筆者も成績を上げろと学生に脅されたことがある。

「苦労して大学に入っても勉強ばかりで楽しくないし、何のための学生生活なのかわからない」

 やつれた姿で学生が愚痴をこぼすことは多々あった。その熾烈な競争を勝ち抜いた者だけに、財閥系企業への挑戦が許されるのだ。

※SAPIO2013年4月号

関連キーワード

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン