ビジネス

ホンダ 2015年F1復帰の狙いは「欧州市場対策と技術者育成」

 2015年と目されるホンダのF1復帰。モータージャーナリストの赤井邦彦氏がその内幕を解説する。どうやら、その狙いはかなり大きなものがあるようなのだ(文中敬称略)。

 * * *
 ホンダという自動車メーカーがF1に出て行くには、より現実的な理由が必要だ。それは、製品である自動車の販売増に繋がる戦略としてのF1参戦でなくてはならない。
 
 自動車業界に目を向けると、高性能で低燃費かつ安価という三つの武器を備えて世界の市場に出て行った日本車は、米国市場はまだしも、欧州では販売台数も伸び悩み、存在感は非常に薄い。
 
 他の日本車メーカー同様、ホンダは欧州のマーケットでは苦戦している。アメリカでは年間200万台に近い数の生産・販売台数を誇るのに対し、欧州はその10分の1。市場シェアも1%強に留まっている。その要因の一つは、現地ユーザーの要求に応える製品がないからだ。欧州では今、小排気量、ディーゼルといったパワーユニットが主流である。環境にもやさしいこの流れを日本メーカーもつかまなければならない。
 
 F1界にもその風は吹く。現行のエンジンシステムは「2.4リッター・自然吸気」が採用されているが、2014年からは「1.6リッター・V6ターボチャージャー」に置き換わることが決定している。これは欧州で進む小排気量化を、F1カーに当てはめるという決定だ。逆にいえばF1用に開発した技術を市販車にも適用できるということになる。
 
 そこにホンダがF1復帰を狙う意味もある。「より社会に貢献できるものを作ることに全力を挙げるのが、我々の大切な使命である。レーサーは製品の尖兵なんで、レーサーと製品とは、いわば往復運動をやっているんだね」とは本田宗一郎の遺訓だ。
 
 こうした技術開発はそこに携わる技術者の育成にも繋がる。レースの現場は非情だ。技術者は厳しい状況の中できっちりと仕事をこなさなければならない。かつて私が取材したレース経験を持つベテラン技術者はこう言っていた。
 
「ホンダがF1グランプリを好きだなんて当たり前なんですね。技術が優れていないと絶対に勝てません。(勝利は)技術が優れていることのものすごい証明にもなる。その結果、技術屋さんがものすごく育つんです」
 
 ホンダは過去のF1参戦においては、期間を定めて技術者の入れ替えを頻繁に行った。それは厳しいF1の現場を経験させることで技術者を育てたいという考えがあったからだ。
 
 次期F1参戦においても、ホンダは当然同様の方法を採るだろう。技術者の育成こそ、ホンダを強い企業にするための根幹だからだ。

※週刊ポスト2013年4月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト