ライフ

別名「パールピンクの女王」は北海道南部以南沿岸部に広く分布

 人間と同様、魚にもニックネームがついている。うんちくが深い魚のニックネームについて、釣り関連の著書を多く執筆・編集している高木道郎氏が解説する。

 * * *
 釣り人は魚にニックネームを付けるのが好きである。「磯の王者」はイシダイ、「磯の女王」はマダイ、「磯の帝王」はクエ、「磯のスプリンター」はヒラマサのことである。

 クロダイは鎧を連想させるいぶし銀の鱗から「磯の荒武者」か「野武士」、「古武士」、白銀色のカイズクラスは「磯の若武者」となる。尾長(クロメジナ)は「黒潮の寵児」、口太はサファイアブルーの目から「磯の至宝」などと呼ばれたりする。エサ取り上手なカワハギは「エサ盗人」、「エサ取り名人」と微妙な扱いだ。

 コンテストを行なったわけでもないだろうが、「砂浜の女王」といえばシロギスのこと。その体色から「パールピンクの女王」とも呼ばれる。

 シロギスは北海道南部以南の沿岸部に広く分布、内湾や内海などの汽水域を中心とした砂底に生息する。冬は深場で越冬するが、産卵期を迎える初夏になると浅場へ移動し、投げ釣りでも十分狙えるようになる。種子島以南の南日本や台湾や東南アジアにはホシギス、沖縄県以南の南日本から東南アジアにはモトギスという種類も生息しているが、日本本土にはいない。

 ただ、昔は関東以西の汽水域には40センチにもなるアオギスが生息していた。漁師が江戸時代からシロギスを海キス、アオギスを河キスと呼んで区別するほど数いたらしい。東京湾では遠浅の海に釣り人が座る脚立を置き、警戒心の強いアオギスを狙う脚立釣りという釣り方もあった。

 昭和30年、1955年頃まで盛んに行なわれていた釣りだが、高度成長による東京湾の埋め立てで生息場所を奪われ、1976年の記録を最後に東京湾から姿を消し、東京湾のアオギスと脚立釣りは幻となってしまった。私たちは豊かさと引き替えに多くを失ったが、今は「砂浜の女王」が日本の海岸に君臨し続けることを願うばかりである。

■高木道郎(たかぎ・みちろう)/1953年生まれ。フリーライターとして、釣り雑誌や単行本などの出版に携わる。北海道から沖縄、海外へも釣行。主な著書に『防波堤釣り入門』(池田書店)、『磯釣りをはじめよう』(山海堂)、『高木道郎のウキフカセ釣り入門』(主婦と生活社)など多数。

※週刊ポスト2013年6月7日号

関連キーワード

トピックス

70歳の誕生日を迎えた明石家さんま
《一時は「声が出てない」「聞き取れない」》明石家さんま、70歳の誕生日に3時間特番が放送 “限界説”はどこへ?今なお求められる背景
NEWSポストセブン
イスラエルとイランの紛争には最新兵器も(写真=AP/AFLO)
イスラエルとの紛争で注目されるイランのドローン技術 これまでの軍事の常識が通用しない“ゲームチェンジャー”と言われる航空機タイプの無人機も
週刊ポスト
一家の大黒柱として弟2人を支えてきた横山裕
「3人そろって隠れ家寿司屋に…」SUPER EIGHT・横山裕、取材班が目撃した“兄弟愛” と“一家の大黒柱”エピソード「弟の大学費用も全部出した」
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《模擬店では「ベビー核テラ」を販売》「悠仁さまを話題作りの道具にしてはいけない!」筑波大の学園祭で巻き起こった“議論”と“ご学友たちの思いやり”
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン
5月6日、ニューメキシコ州で麻薬取締局と地区連邦検事局が数百万錠のフェンタニル錠剤と400万ドルを押収したとボンディ司法長官(右)が発表した(EPA=時事)
《衝撃報道》合成麻薬「フェンタニル」が名古屋を拠点にアメリカに密輸か 日本でも薬物汚染広がる可能性、中毒者の目撃情報も飛び交う
NEWSポストセブン
カトパンこと加藤綾子アナ
《慶應卒イケメン2代目の会社で“陳列を強制”か》加藤綾子アナ『ロピア』社長夫人として2年半ぶりテレビ復帰明けで“思わぬ逆風”
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《2人で滑れて幸せだった》SNS更新続ける浅田真央と2週間沈黙を貫いた村上佳菜子…“断絶”報道も「姉であり親友であり尊敬する人」への想い
NEWSポストセブン
ピンク色のシンプルなTシャツに黒のパンツ、足元はスニーカーというラフな格好
高岡早紀(52)夜の港区で見せた圧巻のすっぴん美肌 衰え知らずの美貌を支える「2時間の鬼トレーニング」とは
NEWSポストセブン