子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で、セックスによって感染する。男性の場合も陰茎がんや膀胱がんの発症リスクはあるが、女性の子宮頸がんに比べると極めて低い。そのためか男性のHPVに対する意識は低いと言われるが、その一方で男性器の皮の部分などは垢がたまりやすく、菌やウイルスの温床になる可能性を指摘する声もある。
作家で女性向けセックストイショップ『ラブピースクラブ』を経営する北原みのりさんはこう語る。
「『女性セブン』の30年ほど前の記事(1981年8月)に、<包茎こそ諸悪の根源>というのがありました。その当時からすでに、男性のペニスの汚さが女性にとってリスキーだと書いてあった。でも、いまだに日本は、男性がセックス前にきれいにすることが、当たり前のマナーとなっていない、そして女性からも言えるようになっていないのではと思います」
そして、子宮頸がんワクチンを巡る報道においても、北原さんはこんな違和感を覚えるという。
「女性への啓発はこれまでもたくさんされてきましたし、ワクチンの接種についても母と娘の苦悩ばかりが取り沙汰されますが、結局、女性の意識を変えようということばかりに目が向いている気がするんです。だけど、HPVについて無知なのはむしろ男性だから、大事なのは男性の意識を変えることでしょう。自分たちも関係しているのに、どうやって感染するのか、感染するとどうなるかさえ知らず、そもそも無関心な人が多すぎる」
実際、熊本県で中高生を対象に出張性教育を行っている池田クリニック院長の池田稔さん(泌尿器科)は、受診する男性の意識の低さを痛感してきた。
「多くの男性は“性病にかかったときに治せばいい”という感じで、予防のことは頭にない。話を聞いていると、根拠なく“おれは大丈夫だ”とコンドームをつけたがらない人も少なくないですね。大人でも、性感染症にかかって病院にくる男性の意識レベルは、中高生とあまり変わりません」
こうした男性側の意識の低さは、日本において“実践的な”性教育がほとんど行われていないことも影響しているようだ。女子栄養大学教授で『こんなに違う! 世界の性教育』(メディアファクトリー新書)を監修した橋本紀子さんが言う。
「日本でも、HIV感染者の増加を受け、1992年に小学校でも本格的な性教育が始まりました。保健分野という扱いで教科書ができて、初潮や精通を教えるようになり、“性教育元年”と呼ばれました。ところが2002年ごろから、“過激性教育”反対キャンペーンといった風潮が強まりました」
2003年、東京・日野市の養護学校で行われていた、人形などの視覚教材を使った性教育が不適切と非難され、当時の校長や教職員が教育委員会から処分を受けた。
「そうした流れの中、現在、教育の現場では、先生たちが萎縮して性教育ができなくなっているのが現状です」(橋本さん)
※女性セブン2013年7月25日号