国際情報

プーチン 元CIA職員スノーデン氏を「子豚」「ゴミ」呼ばわり

 アメリカの個人情報収集活動の実態を暴露し、世界を震撼させた元CIA職員のエドワード・スノーデン氏。ロシアへの一時亡命が認められるまで、モスクワの空港に1か月以上の滞在を強いられた。現在の状況を正しく理解するにはプーチン露大統領をはじめ各国トップと諜報機関が共有する「インテリジェンスの掟」を知る必要がある。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が解説する。

 * * *
 ロシアのプーチン大統領は、「元インテリジェンス・オフィサーという言葉は存在しない」とよく口にする。インテリジェンス機関に勤務した経験のある者は、たとえその職務を離れても一生、国家のために尽くすべきであるという掟に縛られるというのがKGB(ソ連国家保安委員会)将校だったプーチンの職業倫理だ。

 米国の国家機密をマスメディアに暴露した、元CIA(米中央情報局)職員で、NSA(米国家安全保障局)の契約職員であったエドワード・スノーデンに対して、プーチンは極めて冷淡な態度を取っている。8月1日にロシアへの1年間の一時亡命が認められたものの、これはロシア国内におけるスノーデンの身の安全を保障する措置では決してない。プーチンがインテリジェンスの掟に従わないスノーデンを心の底から軽蔑し、嫌っているからだ。

 7月1日の記者会見でプーチンは、スノーデンについて、「ロシアに残りたいのなら条件がひとつある。われわれのパートナーの米国に損害を与えるような活動をやめなければならない」と述べた。

 プーチンは、スノーデンに受け入れ不能と思われた条件をあえて提示し、ロシアから離れることを促している。6月28日付のロシア有力日刊紙「トルード(労働)」電子版に掲載された記事が、プーチンの心象風景を見事に表現している。

〈米国指導部は、うろたえ、興奮して、中国人がいうところでのメンツを失ってしまっている。大洋越しに、何か呂律の回らない調子で、また脅迫調を押し隠す余裕もなく、エクアドルや中国やロシアに対し、もぐもぐ言っている。

(中略)

 ウラジミール・プーチンの反応が、米国人の自尊心をとりわけ傷つけた。プーチンはすでにスノーデンとアサンジは「人権活動家だ」と明言した。スノーデンたちと戦っている連中は「全員、子豚の体毛を刈っているようなものだ。ブヒブヒたくさん鳴くが、刈り取れる毛は少ない」と述べた。

 こういう表現で、プーチンは人権侵害(こういうことに米国人は50年も懸念を表明している)や人権活動家に対する圧迫という口実でロシアを締め付けてきた米国に対して意趣返しをしているのだ。「アメリカ小屋から外にゴミが出てきたら、家主がすぐに常軌を逸してしまった……」〉

 プーチンは、スノーデンを「子豚」「ゴミ」と呼んでいる。CIAのスノーデン拘束作戦が、子豚の体毛刈りであると揶揄し、インテリジェンス機関からスノーデンのようなゴミが出てきただけで、なぜそんなにうろたえるんだと旧KGB将校の視座に立ってこの問題を見ている。

※SAPIO2013年9月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
《TOKIO解散には迷いなし?》松岡昌宏、「男気会見」で隠せなかった本音 唯一違った“足の動き”を見せた質問とは?
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン