パナソニックの乗馬フィットネス機器「ジョーバ」やダイソンのサイクロン掃除機など、テレビ通販でブレークしたヒット商品は数多くあるが、「なぜか買ってしまう」魔力がテレビ通販にはある。
なぜ、こうしたヒット商品がテレビ通販で生まれるのか。
「家のリビングでパジャマでも買い物できる気楽さがいい。ウインドーショッピング感覚で見てるうちに、買うつもりがなかった商品をつい買っちゃうことも」(40代パート)
このつぶやきにその理由があると『お買い物の経済心理学』(筑摩書房刊)の著書がある専修大学経済学部教授の徳田賢二さんは語る。
「どんな媒体であれ、通販は強みと弱みを併せ持ちます。強みは、いつでもどこでも購入できること。弱みは、視覚と聴覚だけに頼るので、味覚や嗅覚などに訴えられないことです。しかもスマホもテレビも電源を切られたら終わり。そんな条件の中で、“買うつもり”にさせるにはかなりの販売技術が問われるのです」
そう、販売のためには数々の“仕掛け”が用意されている。365日24時間生放送でテレビショッピングを手掛ける「ショップチャンネル」の生放送からその秘密をさぐっていこう。
そもそも、なぜネット通販ではなく、テレビ通販を選択するのか。ジュピターショップチャンネル広報の勝賀瀬鮎美さんはこう分析する。
「ネット通販の場合、あらかじめ購入するものが決まっている人の利用が多い。一方、テレビ通販は、普通の買い物同様“商品との出合い”を求めているので、面白いものや気に入ったものがあれば買う、という人が多いのです」
買えるのは“ここだけ”ということも。例えば「内モンゴル産 エアリーカシミヤ100%ストール」は、ショップチャンネルのみの特別商品。ファッション小物・ジュエリー担当のバイヤー・藤永真澄さんは言う。
「国内外のメーカーの展示会を回って、最低でも半年前から企画を進めて商品を選定していきます。工場の閑散期を狙って製造ラインを押さえたり、メーカーさんと一緒にいい商品をお得な価格で作っていく努力をしています」
だが同時に、“安い”だけではヒットしない。ショップチャンネルの商品の条件は、「オリジナル」であること。オリジナルカラーやオリジナルセット、特別価格など希少性がポイントとなる。
「近所で買えるようなものを安くするだけでは売れません。キーワードは“ここでしか買えないもの”。そして価格と商品価値が見合った物でないとダメなんです」(藤永さん)
高級皮革のクロコダイルのバッグや小物も数万~数十万円するものが売れていくという。
「毛皮も、10年以上前は1万円のラビットのストールが人気でしたが、現在の売れ筋は質のいいミンクやロシアンセーブル、チンチラといった高級毛皮の小物が人気ですね」(藤永さん)
安い商品は嫌いではないが、安物を買って銭を失うのはもっと嫌というのが女心だ。
そしてリピーターを作る努力も。それは「商品を“キレイに”ではなく“ありのまま”撮り、見せる」ことだ。一般のスタジオのような強い照明ではなく、普通の蛍光灯を使用することで、家庭に届いた商品と同じように見えるようにしている。商品到着時に「思っていたイメージと違う」となると、返品されてしまうからだ。
※女性セブン2013年11月7日号