「めでたく一軒家を購入したは良いが、近所にトラブルメーカーがいて……」──ゆめゆめこんなケースは想像したくないが、周りを見回せば、こんなトラブルを経験した方もいるのでは? 門に小便をかけたり、庭の木々を折ったりといった狼藉を働く隣人を処罰することは可能なのだろうか? 弁護士の竹下正己氏はこう回答している。
【質問】
隣人に困っています。酔って私の家の門で立ち小便をしたり、庭の木々を折ったりします。注意をすれば「酔っていて覚えていない」としらばっくれ、しまいには「こんな些細なこと、警察は取り合ってくれないよ」といいだす始末。この困った隣人を法的に懲らしめ処罰することはできませんか。
【回答】
隣人の行為は明らかに犯罪です。刑法第261条は、公文書や権利義務に関する私文書、あるいは建造物以外の「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する」と定めています。したがって、庭の樹木を折れば器物損壊罪が成立します。
ただし親告罪ですから、正式に処罰を求める告訴手続きを警察か検察庁にしないと事件にはなりません。被害届だけではだめです。また軽犯罪法第1条26号では「街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者」を1~30日未満の拘留、または1000円以上1万円未満の科料で処罰することにしています。門の街路側で立ち小便をすれば、この軽犯罪法違反になります。
とはいえ、庭の木の枝を折る程度なら、道路に出ている部分で邪魔な場合でしょうし、経済的価値がさほどあるとは思いません。軽犯罪法も第2条で「情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる」としており、公衆便所がない環境下では我慢できない立ち小便をいちいち刑事事件として取り上げることもないと思います。警察が真剣に対処してくれるかは程度問題です。
庭に手を伸ばして折ったりするのであれば悪質です。そうでなくても、折られることで垣根が傷んだりすれば、被害も少なくありません。自宅で用を足せるのに立ち小便も度重なると、不快を越えて衛生上も問題です。
隣人の行為を写真やビデオに撮って証拠に残し、犯行回数と注意した経過を記録にして警察に相談することをお勧めします。冒頭のとおり犯罪は成立しています。生活の平穏が乱されていることを理解してもらえれば、警察からも指導や注意が期待できます。
※週刊ポスト2013年11月22日号