国際情報

日本の恨(うら)みと韓国の恨(ハン)は違うと井沢元彦氏

 現在、国際情報誌『SAPIO』では韓国について特集を組んでいる。一体どのような文化を持つ国なのか? 特集のなかで、権力者が平穏に余生を送れない韓国の文化について、作家で歴史研究家の井沢元彦氏が論じている。その一部を紹介する。

 * * *
 個々の人間が育った環境や受けた教育によって個性の違いが生まれるように、民族にもそういう個性の違いはある。

 そして韓国人に最も顕著な、他の民族にはあまりない特徴といえばやはり「恨(ハン)」の精神であろう。

 日本でも同じ漢字を使った「恨(うら)み」という言葉があるが、「恨(ハン)」と「恨(うら)み」は似て非なるもの、いや全く違うものと考えた方がいいのかもしれない。

 この「恨(ハン)」という言葉を一言で説明するのは非常に難しいので、韓国の歴史に沿って説明しよう。韓国というより朝鮮半島の国家と言った方が正確だが、これは新羅にせよ高麗にせよ大変に「辛い」国家であった。中国という超大国がすぐ北側に存在し、隙あらば朝鮮半島の国家を隷属させ中華文明に呑み込もうとしていたからである。

 古代において、百済や高句麗というライバルを圧倒し、初めて朝鮮半島に統一国家を打ち立てた新羅が選んだのは、中国大陸の国家に政治的には屈辱的な服従をする代わりに、直接の統治は免れて民族としてのアイデンティティーをかろうじて保つという方法であった。具体的に言えば、朝鮮半島の国家の首長である国王は常に中国大陸の国家の首長である皇帝の家臣という形をとったということだ。朝鮮半島の歴史は「中国をご主人様とする」歴史だったのである。

 もちろんそれに対しては強い不満も激しい怒りもくすぶっていたに違いないが、中国という巨大な軍事国家の前では、それを現実に解消する事は不可能であった。だからこそ、それを封じ込めて、逆に生きるエネルギーに変換させようとした。

 国内においても国王や貴族など上流階級は徹底的に庶民を絞りあげた。圧政に苦しんだ庶民も、やり場のない怒りをそうした生きるエネルギーに変換させるしかなかった。

 このような「恨み辛みや不満を、生きるエネルギーに転換した状態」を「恨(ハン)」という。

 理不尽な支配や暴力に対する怒り、あるいは恨みといったものは、確かに人間のエネルギーの源になる事は事実である。しかしそれを活用しようとすることは、長い目で見て決して有効なやり方とは言えない。なぜならそれは、憎悪という最も非理性的な感情を人間活動のモチベーションにするということだからだ。そういう人間は、いやその人間の集団である国家も必要以上に攻撃的になり非理性的にもなる。

※SAPIO2013年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の母・加代子さん(左)と妻・真美子さん(右)
《真美子さんの“スマホ機種”に注目》大谷翔平が信頼する新妻の「母・加代子さんと同じ金銭感覚」
NEWSポストセブン
二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(時事通信フォト)
【スクープ】二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏が年下30代女性と不倫旅行 直撃に「お付き合いさせていただいている」と認める
NEWSポストセブン
雅子さまにとっての新たな1年が始まった(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
《雅子さま、誕生日文書の遅延が常態化》“丁寧すぎる”姿勢が裏目に 混乱を放置している周囲の責任も
女性セブン
M-1王者であり、今春に2度目の上方漫才大賞を受賞したお笑いコンビ・笑い飯(撮影/山口京和)
【「笑い飯」インタビュー】2度目の上方漫才大賞は「一応、ねらってはいた」 西田幸治は50歳になり「歯が3本なくなりました」
NEWSポストセブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《松本人志が出演見送りのM-1》今年の審査員は“中堅芸人”大量増へ 初選出された「注目の2人」
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン