吉野家では女性客を狙った「小盛り丼」や、家族連れを呼び込みたいと卓上コンロで温めながら食べる「牛すき鍋膳」など、あの手この手のメニューで巻き返しを図っている。
だが、そんな吉野家の新機軸にさえ苦言を呈する声もある。
「吉野家がゆっくり食べられるメニューを出しているのは、会社帰りのサラリーマンの“チョイ飲み需要”も狙い、ビールを注文してもらって客単価を上げようという戦略がミエミエです。
例えば、中華食堂の『日高屋』はキリンの生ビールを安価で提供し、客はまず餃子をつまみに生ビールを1杯、それから食事をする人が増えたために客単価が上がって業績は絶好調。吉野家もそれと同じようなスタイルに変貌させたいと思っているのかもしれません。
しかし、そんなファストフード業界の枠を超えたオペレーションはいつか破綻します。そもそもビールをゆっくり飲んで食事をするような店舗設計になっていませんし、店が混んでいる時間帯は客の回転率が悪く、客単価のアップでどこまで補えるのかは疑問です」(中村氏)
吉野家の業績もすき家同様、苦しさを増している。今期の連結営業利益は対前年比15%減の16億円となる見込みで、やはり「はなまる(うどん)」など他業態に頼らざるを得ない状況だ。
市場調査会社の富士経済によると、国内の牛丼市場は好況感も相まって2013年は前年比106.1%となる3702億円、2014年も3909億円と伸びる予想が出ている。しかし、牛丼チェーン大手が揃って誤算続きで迷走するようでは、日々進化を遂げるコンビニなどにますます市場を侵食されかねない。