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東証マザーズ上場CEO 自分へのご褒美は中古のブランド時計

 ライブドアショック以降、激減していたIPO(新規上場)件数だが、2013年には54件にまで急回復した。IPOによって企業は株式市場から資金調達ができ、知名度や信用度も格段に上げることができる。

 それと同時に、会社を育て、上場まで導いた創業者・経営者の持ち株の価値も一気に上がり、彼らは一夜にして莫大な資産を手にいれる。上場は事業家としての一定の「成功の証」であるとともに、大金持ちになるための「王道」でもあるのだ。

 投資情報サイト『東京IPO』西堀敬編集長によれば、とりわけ2013年は恵まれた上場環境にあったという。

「公募価格よりも初値が高くなれば、それだけ企業の資産価値が膨らみ、創業者利益は大きくなる。2013年は12月上旬までに上場した企業は1社も公募価格を初値が下回らなかった。しかも平均騰落率は147%。100円で売り出した株に、初値で247円がついたということ。この数字はこの10年来、最高のものです」

 かくして2013年には数多くの「上場長者」が誕生した。そのうちのひとりが、東証マザーズに上場した「ビューティガレージ」の野村秀輝CEO(46)だ。上場によって約9億円の資産を手に入れたことになる。野村氏はもともと広告代理店に勤務するサラリーマンだったという。

「僕は海外駐在が長く、タイやインドネシアに5年いて、最後の2年間は現地で社長業を任されていました。それがすごく面白くて、経営を自分でやってみたくなったんです。当時は、広告代理店は非常に安定した職業なので、起業家をあまり輩出しないといわれていましたけどね」

 ビューティガレージの事業の柱は、美容院やネイルサロン向けの美容機器のネット販売。ネットを介して直接サロンに販売することで価格を半額以下にし、急速に業績を伸ばしてきた。

「既得権と規制でがんじがらめになっていた美容業界に風穴を開けることができました。でも、既得権益者からは大顰蹙。僕はたまたま門外漢で慣習を何も知らなかったからできたのだと思います」(野村氏)

 それゆえ敵が多いことも自覚している。

「“あいつ上場していい気になってるぞ”といわれないようにしないと。だから広告代理店時代と比べても、まったく遊んでいませんよ(笑い)。上場して株の資産価値は上がりましたが、それを売ることは会社を捨てるということ。僕は株を売っていないので、生活は以前と何も変わっていません。自分へのご褒美にブランドものの時計を中古で買ったくらいです。家も、妻と子供と3人で賃貸で暮らしています」(野村氏)

「日々改善進化」して、美容業界を変えたいと語る野村CEOにとって、上場はまだまだゴールではないようだ。

※週刊ポスト2014年1月1・10日号

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