実際に行ってみてわかったのは、ベラルーシは世界でも最先端と言える「IT国家」になっていることだった。ベラルーシでは年間約1万8000人のIT技術者が大学を卒業する。この人たちをできるだけ国内に留めておくため、首都ミンスクにハイテクパークを建設して海外から企業を呼び込み、雇用先を確保している。ロシアのように原油や天然ガスが豊富な資源国ではないため、「ITで稼いでいこう」という国家ポリシーが非常に明確だ。
ベラルーシでも最大規模のIT企業は「EPAMシステムズ」というソフトウェア会社である。アルカディ・ドブキンという人物が創業者・CEOで、本社はアメリカにあるが、オペレーションの中心はベラルーシ。ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ポーランドなどに展開している。売上高は約500億円で、8000人がシステム開発に携わる。ニューヨーク証券取引所に上場して時価総額が1600億円以上に達している上、グーグルなどの大手IT企業が基幹システムを発注しているため、アメリカでも大きな注目を集めている。
IT業界でベラルーシに熱い視線が注がれている最大の理由は、能力が高くてコストが安いことだ。前述のバイバー・メディアはベラルーシで300人ほど雇用しているが、その人件費は月500ドル(約5万円)ほど。イスラエルでソフトウェアを開発すると月5000ドルくらいかかるから、なんと10分の1である。日本の大手企業に開発を頼んだ場合は、技術者1人あたり月80万~200万円、ディスカウントしても月50万円なので、ベラルーシの競争力はまさに破格である。
※SAPIO2014年1月号